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□When you wish upon a star.
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外傷も見当たらない。
心因性と思われる原因も見当たらない。
それなのに…彼女の記憶は、忽然と消えてしまった。
まるで、これまで生きてきた軌跡を消すかのように…。
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「…朋くん」
『ん?』
「朋くんも…私の記憶が早く戻って欲しい、って思っているよね…」
『……それは…』
彼女が記憶を無くしてから今日まで、戻る気配は全く見られない。
彼女の両親も俺も、周囲の人間も、無理に記憶を戻そうとはせず、そっとしておくことに決めたのだ。
一縷の望みを託して…。
「両親のこと、朋くんのこと、友達のこと、…自分のこと…。全部、忘れちゃいけない大事な記憶なのに…どうして私は忘れちゃったんだろうね」
何も、言えなかった。
世界中、どこを探したって、この難題を易々と解ける人なんて…いないだろう。
俺だって…知れるものなら知りたいよ。
何故、彼女なのか。
何故、彼女の記憶を奪う必要があったのか。
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