Shortstory
□日記
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入るのもためらうほど異様な雰囲気に包まれた深い森の中。
そこに堂々と足を踏み入れる白っぽいフードを深く被った一人の青年、ゼルガディス。
そして迷うことなく歩を進めた先には今にも森と同化しそうなほどに古い洋館が佇んでいた。
ギギィッと鉄格子の門を開け入口に入ると、もう何年か人の入りが無いことが分かるほど、空気は濁りホコリも山のように積もっている。
「懐かしいな…」
思いもせず出たつぶやきに苦々しい表情を浮かべる。そこは何年か前までは、レゾ、エリス、ゼルガディスしか知らないもう一つの秘密の研究所だった。
―――そして合成生物にされた忌々しい記憶の場所。
サイラーグの研究所はもう見ることは叶わない。今レゾの合成生物の研究の記録が残っている可能性があるのはここ位しかないだろう。
そしてレゾが居なくなり誰も邪魔することはない。
期待を胸に秘めゼルガディスはかつての研究室へと地下階段を降りていった。
研究室に入ってどれくらいたっただろうか。
人の入りが無いはずだが、ここだけはホコリもなく綺麗に整えられていたこの部屋が読み漁った分厚い本で埋まってきた頃、ゼルは机の引き出しが2重底になっていたのを発見した。
無理に開けると本が燃えてしまうあの仕掛けだ。
おおかた推理小説にあったのを真似たんだろう。
だが…
本来、『見つかってしまいそうな物を見つからないようにする』もしくは『見られて困るものを隠し、かつ見られないようにする』が目的だと俺は認識している。
でも今この状態は…
引き出しを開けた瞬間すでに本が見えている。
二重底の役割をはたすべき板は本を隠しきれていない…
明らかに本が分厚すぎだ!
これじゃあ『見つかりたいけど見つかりたくない』って言ってるようなもんじゃないか。
これ…なんだ?『れぞ★だいありぃ』ってことは日記か?
えらく丸もじなのはエリスか…
これはもしかしたら!
期待できるか!?
だがやはり分厚い…
関係ありそうな所を重点的に見るか。
そしてゆっくりと本を開いた…