奇家
□夏目田家のはちゃめちゃ生活A
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オレはこの家族は騒がし過ぎると思う。
ろくに本は読めないし、集中したくても出来ないし、紅茶をゆっくり飲むことも出来ない。
主に、三個上の兄貴のせいだ。
別にそこまでイラついているわけではなく、大学生になったら家を出てみようかなという程度だ。
母を早くに亡くしたオレたちは、家事を交代制でこなしている。
だから大抵のことは出来るし、一人暮らしもそれほど苦労しない。
父親を含めて、五人も居るのだから、オレが抜けた所でどうってことはないだろう。
お金がなくて貧乏している、という訳でもないウチは、そのせいで21にもなる兄貴がフリーターの遊び人だ。
別にそれでオレに迷惑をかけないならいいが、シスコンという点では、多大な迷惑を被っている。
今日も、妹の男装姿に飛びついている。
オレは本から目線をあげて、
「ねぇ、うるさい。」
と一言入れた。
しかし、兄貴には届いてなかったようだ。
オレは兄貴の名を呼んで気づかせた後、笑顔で言った。
「別に兄貴の飯に毒薬入れたってバレやしないんだよ?……死にたい?」
兄貴はそれでようやく静かになる。
中2の弟がよくオレのことを「S」だ「ドS」だと言ってくるが、なるほど、こういうことを言って黙らせるのは楽しい。
誰かが怪我したなら、それを爪でひっかくとか、その反応を見るのが楽しくてたまらない。
相手と気分にもよるけど。
だから、オレの家族内の呼び方は「S」か「眼鏡」。
別になんと呼ばれようと構いはしないけど、何のための名前だろうか。
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