短編
□賭博好きのお姫様
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「よっしゃー!!また勝ったー!!!」
思わずガッツポーズで立ち上がる。
「…レオノーラ様、仮にも一国の姫がそのような奇声とポーズをなさるのはいかがなものかと思いますが」
ぎくり。
ここにいるはずのない男の声が何故背後から。
ぎぎぎ、と音がしそうな動きで振り返ると案の定、魔王…ゴホン、いや、『彼』がいた。
「キ、キース…何でここに……!父様とチュチュメスに行ったはずじゃ…」
4日前に、確かに見送ったというのに、なぜここにいるのか。
予定では、1週間は帰ってこないはず。
なんでこんなに早いんだ。
「…チュチュメスでの視察が思ったよりも早く終わりましたので。……陛下がレオノーラ様を心配しておいででしたので、私だけ先に帰ってまいりました」
私の考えをバッチリ読んでくれたらしいキースは、涼しい顔で淡々と答える。
表情を一切変えないその態度はいつものものとはいえ、やはりムカつく。
「そ、そうか。…キース、疲れただろう?今日はもう休んだらど、う…」
私の言葉は最後まで紡がれることはなかった。
だって、目の前のキースが最上級の笑顔で変なオーラを撒き散らしたから。
「レオノーラ様、どうかなさいましたか?」
「い、いえ、ナンデモアリマセン」
キラキラとした笑顔なのにものすごい圧力。
このキラースマイル(私命名)が発動されるのは奴が怒っているとき。
それも最上級に。
これが発動されたら、下手に逆らわないほうがいいということを私は身を持って知っていた。
命の危険どころか魂の危険を感じたときのことは、忘れたくても忘れられない…。
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