短編

□君に依存症
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「今すぐ、帰ってきてほしいなー……なんて」



そう言うと、彼がため息をついたのが電話越しでも分かった。




困らせるだけだってわかっているのに、言わずにはいられなかった。


寂しさに飲み込まれそうで、怖かった。




彼の温もりを感じたい。

その腕に包まれたい。



ただその感情に支配されていた。




『…あのなあ、』



彼の心地よい声すら、電話越しでは寂しさを増長させるものでしかなくて。


近くにいないんだという現実をつきつける証でしかなかった。




こんなに依存してたなんて自分でも知らなくて。





「オレだって早く帰りたかったに決まってんだろ」



1秒でも早く、会いたくて、



「って、え!?な、何っ、あと3時間って」


電話越しだった声が突然直に聞こえてきた。



そして、直後に後ろから抱きしめられた。


驚いて私が顔だけ声のしたほうに向けると、そこには会いたかった彼。


「あー、ちょっと驚かそうかなって思って」


目を見開いたまま固まってしまった私に笑いかける彼はとっても楽しそうで。

テレビで見る笑顔とは違う、少し意地の悪い笑顔。



「……ばか」


今更、電話で言ってしまった自分の言葉が恥ずかしくなってきた。

それを隠すために俯いて呟く。


でも、それすら彼にはお見通しらしく。



次の瞬間、体がふわっと包まれる。






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