BLEACH

□華冠
1ページ/1ページ


「お前の髪、綺麗だな」






「そう?兄さんの方が綺麗だと思うけど。金色で、長くて、するっと指が通るもの…シルクみたいで綺麗だよ」
兄さんはふふっと笑うと、今度は後ろの毛を揃え始めた。しゃり、しゃり、と鋏のたてる音を聞きながら、僕は瞼を閉じる。
「俺の髪の毛は手入れしまくってるからな。薬漬けで痛みきってるよ。自然な綺麗さなんだよ…お前の髪の毛は」
羨ましいなぁ、なんて言いながら、すっすっ、と櫛を馴れた手付きで動かしていく。細くて、でもがっしりした兄さんの指が僕のふわっとした桃色の髪に絡まっていく。
僕はこの瞬間が一番好き。兄さんの暖かさが伝わってくるから。
二人だけの、砂糖菓子みたいな時間。



そう、僕は魔法をかけられて着飾った、シンデレラの気分なんだ。




「はい、出来た。目ぇ開けな?」
鏡を手に握らされて、そっと目を開く。ヘーゼル色が僕を覗き込んでいた。
「薔薇で冠作ったら、絶対似合うよな」
「兄さんも似合いそうだよね…赤い薔薇、シュワルツマドンナなんかはどう?」
ははっと兄さんが笑う。葡萄色の瞳がシャンデリアのように煌めいた。
「ならお前はフレンチレースかな。髪によく合いそうだ」
長い睫毛を伏せて、兄さんは僕を抱き寄せる。
「俺以外の奴に髪を切らせるなよ?誰かがお前の髪の毛弄るなんて考えたくない」
と耳元で囁かれ、僕は
「魔法をかけれるのは兄さんだけだから。」
そう微笑んで答えた。


約束だぞ?

うん、約束する。








銀色に輝く月のくに、砂丘にそびえるは純白の大理石のお城。

そこに居るのは姫君と、魔法使いの王子様。












††††
短いの難しい…orz
※シュワルツマドンナ、フレンチレース…薔薇の品種

2008.12.30(TUE)

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ