復活×狩人

□標的00
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全ては、神様の間違えから始まった。



標的00 序章



「……………」

目が覚めるなり、少女――レイは眉を寄せた。

一面に広がる、白。

四方八方全てが白いせいで、距離感が全く掴めない。
そもそも自分はこんな場所は知らない。だいたい昨日は、万屋としての仕事を終え、自宅のベッドで休んだはずだ。

「……全く、何がどうなってるんだか…」

片手で頭を抱え、嘆息する。

「教えてやろうか?」

「そうだね。そうしてくれるとありがた……ん?」

ふいに背後からかけられた声に、振り返って身構える。
そこには、黒髪の男が立っていた。

「……誰?」

目を細め、僅かに殺気を放ちながら低い声で訊ねる。
その殺気にさらされたのか、男は慌てて口を開いた。

「待て待て待て。そう殺気出すなって。別に取って食おうとか考えてねぇんだから」

「……質問に答えて」

変わらぬ彼女の口調に、男は小さく息をついた。

「聞いて驚くなよ?オレは……神だ」

「………」

「……なんだよ。そのイタい子見るような目は

先程とは違うレイの視線を受け、男は心外だと言わんばかりの表情で言った。

「……で?その自称神サマが私に何の用?」

「何だよそのハンパは間は」

綺麗に流された事についてしっかりとツッコミを入れた男は、若干バツが悪そうに片手で頭を掻いた。

「あー、ちょっとな、お前に謝んなきゃなんねぇことがあってよ」

「謝んなきゃいけないこと?」

レイは眉を寄せて聞き返した。
すると神と名乗った男は、急に真面目な表情になった。

「実は……遊んでたらお前を間違って空間の狭間に落としちまったんだわ

「…………は?」

てへ、と言わんばかりにサラリと放たれた言葉にわけがわからず、レイは頓狂な声を上げた。
それに対し、神と名乗った男は悪ぃ、と曖昧に笑っている。

「……つまり、私はアンタの悪ふざけに巻き込まれた、と?」

混乱しながらも頭を整理しながらレイは言った。

「平たく言えばそういうことになるな」

「なるほど――って、納得できるわけないでしょ」

「だよなぁ……」

レイの言葉に、男も頷く。

「わかってるんだったら元に戻してくれない?明日も仕事なんだけど」

「そうしたいのは山々なんだが、それができねぇんだ」

「……冗談はやめてくれないかな?」

「この状況下で冗談言うほど俺も馬鹿じゃねぇよ」

冗談だったら良かったんだがな、と男は肩を竦めた。

「お前がいた世界の“道”が消えちまったんだよ。だから元いた場所には還(カエ)せない」

言い放たれたのは理不尽な宣告。
男もそれを重々承知しているのかすまなそうに頭を下げた。
しかしそれで納得できる程、レイは優しい人間ではない。

「ふざけないで。アンタの不注意でこうなったんでしょ?大体、神サマなら何とかしなさいよ」

冷めた口調でレイは言い放った。

「それが出来ればさっさとそうしてる。神って言ったってそこまで万能じゃねぇんだ」

「………」

己の無力さと責任や謝罪といった様々な表情が入り混じった顔に、流石にレイも黙り込んだ。

「……じゃあ何?このまま一生この真っ白い妙な空間ですごせっていうの?」

「それも選択肢の一つだな」

「……どういうこと?」

レイは眉を寄せながら訊ねる。
この男は今さっき、“元いた場所には還れない”と言った。
還れないのならば、ここにとどまるしかないはずだが、男の口振りからすると、他にも選択肢はあるようだ。

「オレとしてはこっちがお勧めなんだが……」

「もったいぶらずに言って」

男は真剣な面持ちで口を開く。


「別世界に行くんだよ」



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