復活×狩人
□標的00
1ページ/2ページ
全ては、神様の間違えから始まった。
標的00 序章
「……………」
目が覚めるなり、少女――レイは眉を寄せた。
一面に広がる、白。
四方八方全てが白いせいで、距離感が全く掴めない。
そもそも自分はこんな場所は知らない。だいたい昨日は、万屋としての仕事を終え、自宅のベッドで休んだはずだ。
「……全く、何がどうなってるんだか…」
片手で頭を抱え、嘆息する。
「教えてやろうか?」
「そうだね。そうしてくれるとありがた……ん?」
ふいに背後からかけられた声に、振り返って身構える。
そこには、黒髪の男が立っていた。
「……誰?」
目を細め、僅かに殺気を放ちながら低い声で訊ねる。
その殺気にさらされたのか、男は慌てて口を開いた。
「待て待て待て。そう殺気出すなって。別に取って食おうとか考えてねぇんだから」
「……質問に答えて」
変わらぬ彼女の口調に、男は小さく息をついた。
「聞いて驚くなよ?オレは……神だ」
「………」
「……なんだよ。そのイタい子見るような目は」
先程とは違うレイの視線を受け、男は心外だと言わんばかりの表情で言った。
「……で?その自称神サマが私に何の用?」
「何だよそのハンパは間は」
綺麗に流された事についてしっかりとツッコミを入れた男は、若干バツが悪そうに片手で頭を掻いた。
「あー、ちょっとな、お前に謝んなきゃなんねぇことがあってよ」
「謝んなきゃいけないこと?」
レイは眉を寄せて聞き返した。
すると神と名乗った男は、急に真面目な表情になった。
「実は……遊んでたらお前を間違って空間の狭間に落としちまったんだわ」
「…………は?」
てへ、と言わんばかりにサラリと放たれた言葉にわけがわからず、レイは頓狂な声を上げた。
それに対し、神と名乗った男は悪ぃ、と曖昧に笑っている。
「……つまり、私はアンタの悪ふざけに巻き込まれた、と?」
混乱しながらも頭を整理しながらレイは言った。
「平たく言えばそういうことになるな」
「なるほど――って、納得できるわけないでしょ」
「だよなぁ……」
レイの言葉に、男も頷く。
「わかってるんだったら元に戻してくれない?明日も仕事なんだけど」
「そうしたいのは山々なんだが、それができねぇんだ」
「……冗談はやめてくれないかな?」
「この状況下で冗談言うほど俺も馬鹿じゃねぇよ」
冗談だったら良かったんだがな、と男は肩を竦めた。
「お前がいた世界の“道”が消えちまったんだよ。だから元いた場所には還(カエ)せない」
言い放たれたのは理不尽な宣告。
男もそれを重々承知しているのかすまなそうに頭を下げた。
しかしそれで納得できる程、レイは優しい人間ではない。
「ふざけないで。アンタの不注意でこうなったんでしょ?大体、神サマなら何とかしなさいよ」
冷めた口調でレイは言い放った。
「それが出来ればさっさとそうしてる。神って言ったってそこまで万能じゃねぇんだ」
「………」
己の無力さと責任や謝罪といった様々な表情が入り混じった顔に、流石にレイも黙り込んだ。
「……じゃあ何?このまま一生この真っ白い妙な空間ですごせっていうの?」
「それも選択肢の一つだな」
「……どういうこと?」
レイは眉を寄せながら訊ねる。
この男は今さっき、“元いた場所には還れない”と言った。
還れないのならば、ここにとどまるしかないはずだが、男の口振りからすると、他にも選択肢はあるようだ。
「オレとしてはこっちがお勧めなんだが……」
「もったいぶらずに言って」
男は真剣な面持ちで口を開く。
「別世界に行くんだよ」
→