復活×狩人

□標的01
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新たな拠点となったマンションからそれほど離れていないデパートで、必要なものを買い揃えたレイは、明日から通う事になっている並森中学を訪れた。
デパートでは衣類、食料品、パソコンといった電子機を結構買い込んだが、全て次元ノ狭間(ディメンションシェルント)に仕舞っているので、レイ自身は手ぶらだ。

「ここが並中か……」

閉められた校門越しに物珍しそうに校舎を見上げるレイ。
物心ついた時から、生きるために盗みや殺しが日常茶飯時だったということもあり、元いた世界では、学校などという所には通ったことがなかった。
憧れが全くなかったわけではない。だが当時の現状を考えると、そんなことを言っている状況ではなかったのだ。

 明日からここに通うことになるんだ……

そう感慨に浸っていたせいか、レイは近付く人の気配に気付かなかった。


「――ねぇ」


「!」

声をかけられレイは弾かれたように振り返る。
そこには、学ランを羽織った自分と同じくらいの少年がいた。

「なに?」

「見たところ部外者のようだけど、僕の学校に何か用?」

レイは眉を寄せた。
少年の発言もそうだが、その格好もだ。確か並森中はブレザーだったはず。
内心困惑するレイをよそに、少年は何を思ったのかトンファーを構えた。
本来であれば何かしらの反応をする所だが、武器に慣れてしまっているレイにとってはさして驚くことでもない。
レイの反応の薄さが癪に障ったのか、少年は不機嫌そうな口調で言う。

「黙ってないで質問に答えてくれる?僕はそんなに気が長くないんだ」

「あ、うん。そうみたいだね」

完全に臨戦体勢の少年を見て、レイはただ頷いた。
それなりに出来るようだが、レイにしてみればどうということはない。

「……咬み殺すよ?」

「へぇ、できるのかな?キミに」

「いい度胸してるね。君」

わざと挑発的な態度を取ると、少年はいっきに間合いを詰め、レイに向かってトンファーを振り下ろした。

「――…遅いよ」

レイは流れるような動作でこれをかわすと、少年のトンファーを蹴り飛ばした。
予想外の展開に、少年は軽く目を見開いた。
その一瞬の隙をつき、レイは少年の懐に入ると、少年を投げ飛ばす。
少年は受身は取れたようだが、背中から地面に倒れこんだ。

「動きは悪くないけど、まだまだね」

仰向けになったままの少年を見下ろしながら、レイは言った。

「そうそう、さっきの質問の答えだけど、明日からここに通うことになって、今日はその下見」

少年の質問に答えると、レイは立てる?と少年に手を差し出した。
手を差し出された事が意外だったのか、少年は目を見開いた。

「……変わってるね、君」

「そう?」

差し出した手を取り、立ち上がりながら少年が言うと、レイは小首を傾げた。

「明日からここに通うってことは、君転入生?」

「そうなるね。そういうキミはこの学校の生徒なの?」

「そうだよ」

「なんで学ランなの?並中はブレザーだったと思うけど……」

「風紀委員は特別なんだよ。ちなみに僕が委員長」

「へぇ……見えないわね」

「……喧嘩売ってるの?」

「まさか。ただ正直な感想を言っただけなんだけど

さらりと何も悪びれもなくそう言うと、少年は嘆息した。

「まあいいや。――君、名前は?」

「レイ=エーミスよ。レイでいいわ。そういうキミは?」

「雲雀恭弥」

「恭弥ね。よろしく」

「………」

「どうしたの?…あ、いきなり名前呼びは馴々しかった?」

元いた世界では名前で呼び合うことが普通だったため、ついいつもの癖で雲雀のことを名前で呼んでしまった。

「別にいいよ。それよりレイ、明日学校に来たら応接室に来てよ」

「応接室?なんでまた」

「風紀委員の拠点なんだよ。大抵僕はそこにいるから」

なるほど、要は会いに来いということか。

「わかった。家の片付けもあるから、今日はこれで帰りたいんだけど」

「いいよ。ただし、明日必ず来てね」

「はいはい」

言うや否やレイは踵を返した。
この世界――厳密に言えばこの国は――元いた世界と比べて遥かに治安は良い方だろう。
その割りには先ほどの少年――雲雀は戦い慣れているように見えた。
そういう意味ではこの世界に来て早々なんだか厄介な人物に気に入られたような気もするが、まぁ何とかなるだろう。



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