Short Story (流)
□叶わぬ恋と墮天使
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今日も今までと同じように、つかず離れず彼の後をついて言っている。
最近になって、彼から話しかけてくれるようになっていた。
「お前、俺の後ついてきて面白いのか?」
「はい。あなたは強いから、戦闘を見ていて気持ちがいいです」
私が正直に答えると、彼は「そうか」とだけ言った。
他のエクソシストと共同の任務らしく、しばらく歩くと遠くからこえが聞こえた。
「神田ー!遅いですよ!!」
「うるせぇ、モヤシ」
その時、私は一瞬嫌な予感がした。でも、それを再び思いだしたころには、モヤシとやらの近くに来ていて、もう遅かった。
モヤシは突然、私のほうを見て
「神田、彼女アクマですよ」
あーあ、やっぱりこいつ、伯爵さまが言っていたアクマの魂が見えるという、アレン・ウォーカーだったんだ。
「隙を狙ってたのか?」
急に彼の眼光が鋭くなって、私を睨みつけた。
違う、と言いかけてやめた。だってもう、どうすることもできない。取り返せない時間。
なら、いっそ。
彼を狙っていた振りをしよう。そして……
「そうよ。あなた、ちっとも気づかないんだもの。人間なんてそんなものなのね。所詮群れてピーピー鳴いてるだけに過ぎないのよ」
思ってもないことを口にして、自分はアクマなのだと改めて認識した。だって、今の言葉はこれまで殺してきた人間に言った言葉だったから。
「アクマにはわからねぇよ、人間のことなんて」
「人間がアクマのことが分からないように?」
「あぁ」
彼はゆっくりと刀を抜いた。私は戦う姿勢だけ見せて、実際に戦う気なんてなかった。
知ってしまった、恋。
知ってしまった、感情。
知ってしまった、運命。
アクマがエクソシストに恋をするなんてありえない。
エクソシストがアクマに恋をするなんてありえないように。