Short Story (流)

□叶わぬ恋と墮天使
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彼は任務場所に向かっているようだ。刀を持って、なんの迷いもなく足をすすめている。
私はそんな彼の後をこっそりとつけていく。彼は気づいているかもしれない。突然立ち止まって攻撃してくるかもしれない。でも、私はそれでもよかった。叶わぬ夢を見続けるくらいなら、きっと。

私が彼に魅かれたのはどうしてだろう。
彼の死んでたまるか、という強い思い?
彼の戦う姿の凛々しさ?
彼の求める何かを追う姿?
彼の死を前にしたとしても、揺るがない瞳?
たぶん、どれも違う。

人間の弱さの中に潜む、本当の強さ。

私は思う。アクマはなんて弱いんだろうと。守るものも目指す目的もない。ただ人間を殺してレベルアップして、また人間を殺すだけ。
守るものを持ったエクソシストに勝てるわけなんかない。もちろん、これは私が弱いだけかもしれないけれど。



彼はゆっくりと速度を落として、立ち止まった。

「俺に何か用か?」

いきなり攻撃なんてしてこなかった。振り返りもせずに、尋ねてきただけだった。

「……迷惑、ですか?」

「あぁ。用がないなら消えろ」

直球できた。びっくりした、というよりは、やっぱりという思いが強い。彼の他のエクソシストへの態度を見ていればわかることだ。でも、文句を言いつつもかばったりするところを見ると、やっぱり人間だな、と思う。

「邪魔はしないから、ついていってもいいですか?」

「……戦闘に巻き込まれても知らないからな」

彼は意外とあっさり了承してくれた。もちろん、私がアクマだと知らないからだろうけど。

彼が戦闘に入ったころ、私は仲間に気づかれると色々面倒だから、少し離れたところで見ておく。彼の戦闘はさすがの一言に尽きる。アクマたちを圧倒して、全部片付けてしまった。


そんな日がどのくらいか続いたある日、思いもよらないことが起きた。
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