目が覚めたら

□目が覚めたら
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最近変だ… 心臓が煩くなる… 頬が赤く染まる… いつからかはわからねぇ。 気付けばこんなことになっていた。そんな風になるのは決まってトーマと一緒にいる時だ。 これじゃDATSの任務に支障が出る。つーか実際支障が出ちまって(主に機械を破壊)俺は隊長に別室に呼び出されて叱られた後だ。ちなみに今テーブルを挟んだ向かい側のソファーに隊長が座っている。俺もソファーに座って、隊長がいれてくれた暖かいココアが入ったマグカップを手にしていた。 「で?…なにか悩みでもあるのか?」 ふいに隊長が短くて長い沈んだ沈黙を破った。 「それは…そのっ……」 幸い俺に気を使ってくれたのかクダモンの姿はない。少し躊躇ったものの、俺は正直に話すことにした。隊長は大人だ。この変な感じのやつの事もわかってくれるかもしんねぇ。 「最近、トーマと一緒にいると変な感じがするんだ……」 「変な感じ?」 「心臓が煩くなったり、顔が赤くなったり…他の奴と一緒にいるのを見るとなんかイラつくし…寂しくなるし、辛くなるし…離れたい筈なのになんか、離れるの嫌…で…って、隊長?」 言い終わる前に俺は隊長の異変に気付いた。隊長は自分
手のひらで顔を覆いでっかい溜め息を吐いている。 「鈍っ…ってか、よりによって…トーマとは……」 小さく呟いて何やらムスッとしている。 「あの、隊長…怒って「ない。」 きっぱり言われた。 絶対怒ってる! なんか知らなねぇけど怒ってる! どうしようか悩んでいると隊長はムスッとしたまま言った。 「ちなみに、悩みの解決策は私にはわからないな……わかってても教えん。」 「なっ…」 「自分で解決しろ。」 「はい……」 結局、俺の悩みはまだ解決しない。とりあえず隊長が強調して「ココアを飲んでのんびりしていけ」と言うので言葉に甘えて少しのんびりすることにした。 隊長は仕事に戻って、部屋には一人。最近ずっと悩んでいてあまり眠れなかったせいか俺はいつの間にか眠ってしまった… .
どれくらい眠っていたのか……ふいに聞こえたのは足音。すぐに誰の足音かわかった。 この足音はトーマの足音。トーマは小さく溜め息を吐いて何やら呟いている。 「僕、隊長に何したかな…何でいきなり大量の資料整理を…帰ったら早めに終わらせないと…」 トーマの足音が近づく。俺はどうしていいかわからず寝たフリをした。 「大、そろそろ仕事に戻…」 言葉が途切れる。俺が寝てるのに気付いたらしい。(寝たフリだけど…) まぁ、すぐに起こされるだろうとそう思った…が。トーマの足音が遠退く。 何だ? 不思議に思っていると少しして感じたのは…柔らかい毛布の感触。 …めちゃくちゃ驚いた。 絶対に起こされると思っていたから…… けど、トーマは俺を起こさず、毛布までかけてくれた…… 優しいんだな… もっと冷たいかと思ってた。 トーマが俺の隣に座る。 一気に心臓が煩くなった。 気付かれそうで怖い けど、嬉しい…… いろんな気持ちがごちゃ混ぜになって不思議な気持ちだ。 「何か悩み事があったら、僕に言うんだぞ……って、寝てる相手に何を言ってるんだろうな…起きてる時に言わなきゃ意味ない
のに。」 ………トーマの言葉にさらに胸が高鳴る… 嬉しい…トーマが俺を…気にかけてくれてる。 ─トン ふいにトーマが俺の体を引き寄せる。引寄せられた俺の体は、トーマに寄りかかる。 毛布越しでもわかるトーマの温もりは… めちゃくちゃドキドキして心臓が煩くなるんだけど……めちゃくちゃ安心出来る。 瞬間、俺の悩みが一気に吹っ飛んだ。 あぁ… そっか、やっとわかった… 俺の悩み事の答えが… こんなに簡単な答えだったんだな…… 悩みが消えたのと、 安心する温もりのせいか また睡魔が出てくる。 もうしばらくこうしていたくて、俺は睡魔に逆らうことはしなかった…… 夢の中に沈む意識の中、 ぼんやり思った…… 目が覚めたら… トーマに俺の悩んでいたことと、その悩みの答えを言おう。 きっと、 トーマは笑わないで聞いてくれるから… ─俺は、トーマのことが……‥─ end

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