薄桜鬼&AMNESIA
□心を奪われた日
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一年生の時、私は恋に落ちた。
永倉「じゃ、うちのクラスは眠れる森の美女の劇をやるんで決定だな!お前達、やるからには最優秀賞を狙うぞ!」
生徒「おおおおーーーーっ!!!」
皆気合入ってる。この先生の熱血ぶりにはたまについていけない。
イベントごとは嫌いじゃないけど、正直適当にやればいいと思うんだけどな…。
永倉「それじゃあ、役決めるぞ。誰か立候補いないか?推薦でもいいぞ。」
総司「はい。僕は美貴ちゃんをお姫様役に推薦します。」
美貴『はっ?!』
突然名前を出されて私は総司君を睨むように振り返った。
前々から妙にちょっかい出す奴だと思っていたけど、こんな時まで?
生徒1「確かに美貴ちゃんがいいかも!ちょっと似てるもんね〜」
何がですか。どの辺ですか。
永倉「どうだ。ヒロインやってみないか?」
美貴『えっと…それはちょ「おい総司!言いだしっぺなんだから王子役はお前がやれよ!」
総司「え?面倒だなぁ。」
生徒2「面倒だなぁ、じゃねーよ!お前ら仲良いしいいだろ!」
いやそれは違うと思います、はい。色んな意味で違います!
面倒だと言った割には特に異議申し立てをするでもなく、総司君は何を考えてるのか分からない。
せめてもの抵抗で弱々しく首を振るも、役決めは無情にも進行していくのであった…。
拒否権など初めからなかったかのようにヒロインに抜擢されてから、本番に向けての練習が始まった。
覚えることは多かったけど、連日遅くまで練習を重ねた成果か、だいぶ様になってきた。
衣装も原作に沿った、学祭にしては本格的なもので、これを着られただけでもお姫様役を演じられてよかった、なんて現金なことを考えてしまう。
そして当日……。
「オーロラ姫は、糸車に指を刺し、眠りについてしまいました…」
ナレーションに合わせて、フラフラと舞台セットのベッドに倒れ込むようにして横たわる。
目を閉じたまま周囲の音、動きに気を配る。
次に私が動くのは王子とのキスシーン。キスはするふりだから、うまく王子役の総司君やBGMとのタイミングを合わせないといけない。
それに目を閉じて微動だにしないようにするのも、実際に演じると思う以上に気を張るのだ。一瞬でも気を抜けない。
周囲の動きに神経を研ぎ澄ませながら、私はオーロラとして眠り続けた。