SDGF・短編T

□ある日の休日
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ある休日の午後



 闇が支配していたラクロアを復興するために王勅令で
強制的に復興援助を強いられることとなったトールギスとデスサイズ。
強制労働とはいえ、ちゃんと休暇をやらねばまた反乱を起こしかねないからな〜、と
呑気な態度で口走った王の提案により、2人の騎士に休暇が出された。


 これはそんな休日の午後に起きた2人の小話である……。



 ――その日、トールギスは王によって宛がわれた部屋の前に佇む、
ふよふよと浮いている物体を見て、なんともいえぬ表情を浮かべた。
この場に彼の腹心たる騎士がいたならば、彼らは酷く狼狽していたことであろう。

「これはトールギス。相変わらず、今日もご機嫌――」
「麗しくない」

 デスサイズの言葉を遮って、トールギスは否定の言葉を投げかけた。

「何しに来た」

「いや、大した用事ではございませんよ」

「なら、さっさと自室に戻れ。俺の優雅な一時を邪魔するな、デスサイズ」

「優雅な一時と申されましても、どうせ暇でしょう?」

 見事に図星を突かれてしまい、トールギスはう、と言葉を詰まらせた。
エネルギー体状態のデスサイズがニヤリと妖しく笑む。


「ゼロからチェス盤を借りて来ましたので、一回ほど勝負などしてはどうです?」

「要は勝負相手が欲しかっただけだろ、お前」

「まあ、そうとも言いますね」

 そうとしか言いようがないだろうが――微かな痛みを覚え始めてきた頭に指先を当てながら、
トールギスは溜息を一つ吐く。
少しだが、コイツに振り回されていたゼロの心境が理解出来た。


(という俺も、少し前まではコイツを部下として扱っていたがな……)

 コレを上手く扱うことが出来るのは後にも先にもリリジマーナ1人なのだろう。
それを考えるとリリジマーナが凄く素晴らしい人物に思えてならない。

「まあ、立ち話もなんですから、お邪魔しますね」

「許可を聞く以前に、もう体の半分が入室済みだろうが」

 そう文句を言っても、デスサイズは既に扉を掻い潜って入室する。
はあ、と溜息を吐きながら、トールギスは扉を開けて自室に入り込む。

 サイドテーブルの上にチェス盤を置き、イスに腰を下ろすデスサイズ。
エネルギー体から実体へと戻った彼の姿を見て、トールギスは驚きを隠しきれなかった。
すぐに、あぁ、と納得の一言を発する。


「そういえばスティールドラゴンはフェザードラゴン共々、厳重に封印されているんだったな」

 デスサイズ――否、スティールドラゴンの鎧を纏わぬディードはええ、と会釈するようにして頷く。

「まあ、リリの命令なら、スティールドラゴンだろうが、バグバグだろうが、
ダークアクシズの要塞だろうが、プリンセスローズだろうが、バナナの木だろうが、何でも捧げますよ?」





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