SDGF・長編 ブック


□序章
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「これは『精霊の卵』って言ってな、お前ら、この国の出身なら――、
いや、この世界の住人なら知ってるだろ?」

 中央の少年が差し出された箱を受け取る中、左右に立つ少年らが大きく頷いた。

「ラクロアの救う《鍵》だって、大賢者様達が言ってた」
「でも、予言で伝えられた勇者がいないと無理だよ」

「勇者ァ?」

 胡乱気な眼差しを向けながら訝しげに聞き返す。
ふと『勇者』の肩書きを持つ少年を思い出し、彼はフードの舌で表情を引きつらせた。
――まさか。

「ちょっと待て。それって、まさか『鍵』の勇者様、とか言うんじゃねェだろうな?」
「『鍵』?」

「違う。予言に伝えられてるのは『翼の騎士(ナイト)』だよ」
「ま、そりゃそうだ」
 アイツが関わったら、【王国心】も無関係じゃなくなるからな――と内心呟く。

「ま、細かいことはあえて聞かねェことにしよう。
んでだ、いきなりで悪いが、お前らに1つ頼みたいことがある」

 三つ子たちはえ、と彼を見上げた。

「俺は、とある人の使いで『精霊の卵』をここまで届けに来た。
――が、お前らの言うとおり、そいつは、その『翼の騎士(ナイト)』がいねェと使えない代物。
探したいのは山々だが、生憎俺も他の仕事があるから、渡せねェんだよなァ。
そこで、『精霊の卵』を一度お前らに託す。それを、その『翼の騎士(ナイト)』とやらに渡してくれ」

「僕らが?」
「『精霊の卵』を……」
「救世主・ゼロに?」

 1人の語尾に2人目が続き、3人目が最後を締める。
息があった三つ子の言々に、思わず苦笑が浮かぶ。少し間を空けて、彼は頷いた。

「ま、そういうことだ。頼むぜ」
「「「うん! 絶対救世主・ゼロに渡すよ!」」」

 見事にハモった声色に、苦笑が深く刻まれる。

「―――……」

 邪気、と言おうか――明らかに自分と同じ匂いを持つ気配がして、
しかし動揺を見せることなく、肩越しに後ろを振り向く。

 少し離れた地から、朱印で書かれた魔法陣が浮かび上がり、そこから緑色のエネルギー体が現われた。

「これはこれは……、既に生き残りはいないと思った、
このラクロアで人の気配がしたと思い、来てみれば……随分、いますねェ?」

 エネルギー体の中で光る金色の双眸が、彼の後ろにいる三つ子たちを捉える。
隔てるように炎を走らせた彼は、炎を纏ったチャクラムを構え、フードの下で妖艶と笑む。

「何ヶ月ぶりかね〜、お仲間さんと会うのは。
ま、俺の場合“裏切り者”だから、今となっちゃ、どうでもいいことだけどな」

「お仲間……」




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