短編V
□DEAR
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書類の山を掻い潜り、声のあった場所に行く。
其処には書類に半分埋まりつつ、コンソールに手を伸ばしているマドナッグの姿があった。
「ま、マドナッグさん・・!」
マドナッグはゆっくりとトレラの方へ顔を向け、ため息を漏らした。
「人手がいなくてな。」
マドナッグはそう言ってコンソールを再び叩き始める。
どうやら主任も書類に追われ、徹夜続きだったらしい。
トレラはベル・ウッドの存在を聞いたがマドナッグは同じく寝ていると答えた。
「あ、あの・・お手伝いしましょうか?」
手で軽く丸め、口元にあててトレラはそう言うが、マドナッグは首を横に振った。
「いや、こんなのは直ぐに終わる。」
「そ、そうですか・・。」
やけに暗いトレラの様子にマドナッグは違和感を覚える。
いつもなら遠慮しても良いですよ良いですよ、と自分から席に座り仕事を手伝い始める。
そう言った事を期待・・はしていないが、予想をしていたマドナッグだが見事に予想外の状況になってしまった。
「―・・クァシエが出張に行ってから三日か・・。」
「!」
「流石に三日だと・・辛いか?」
「・・・・・。」
トレラの心情をズバズバと言い当てるマドナッグに対してトレラは目を瞬き、次第に顔を俯かせた。
その様子にマドナッグはしまった、と顔を曇らせた。
「・・だ、駄目ですよね〜・・私ったら・・。」
「何がだ?」
「仕事に支障をきたし過ぎなんです・・私。」
「・・・・。」
書類や入力ミス・・トレラの得意とする仕事が全て手がつかなくなる程
彼女の心の中は不安や寂しさで充満されているのだろう。
そんな話を小耳に挟んだマドナッグは先ほどの一方的な言葉を言ってしまったのだ。
たまにだがトレラが女と見えなくなる場合がある。
それはそうだ、仕事もできるし怪力だし・・それに彼女は唯一の女性型MDなのだから。
それにまだ慣れないマドナッグであった。
デリカシーが無い、と言うべきだ。
そんな考えが脳裏によぎって行くマドナッグは酷く罪悪感を覚えた。
「では、私はこれで失礼しますね。」
何時もより元気のない声色でそう言い、トレラはペコりと頭を下げる。
そんな彼女を見ずにパソコンの画面をじっと見つめるマドナッグ。
トレラは自動ドアの前に立ち、自動ドアが開いた。