短編V
□DEAR IS LEAARE
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その扉からひょこっと顔を出した青年は毎朝クァシエに新聞を届けている青年だ。
「あ、よかった。仕事終わったんですね」
「どうしたんだ? 今日、新聞届いてたよ?」
「あ、違うんです。今日はクァシエ殿に頼まれたものがありまして……」
「頼まれたもの?」
なんだろう、と首を傾げていると、配達員の青年は方から下げている鞄から一枚の封筒をクァシエに渡した。
快晴の空がプリントされたそれを持つ者を、クァシエは知らない。
「手紙?」
「ネオトピアにお住いのトレラさんからです」
「Σ△@×☆刀c…!?」
配達員の口からトレラの名前が出てくるなり、
クァシエは彼の手から手紙を奪うようにして受け取った。
「可愛らしい方ですした。クァシエ殿の恋人さんですか?」
「それを越して、愛妻デス……///」
「え……?」
クァシエが恥ずかしそうに呟いた言葉を聞いて、配達員は固まった。
配達員など目もくれず、クァシエはせっせっとトレラから送られてきた封筒の中身を空ける。
淡い空を背景に、機械的な文字が多く綴られている。
文頭は、恐らく搭載されている辞書を使って書いたのだろう。
晩夏、立秋など、堅い表現が書かれている。
「これじゃあ、会社向けに書くものだよ」
そんなところがまた可愛いと思ってしまう。
次に書かれていたのは、こちらの出来事に対する質問だ。
出張でネオトピアを空けてからはや3日とはいえ、相当心配しているようだ。
その都度、クァシエは「大丈夫、大丈夫」と苦笑して、まるでトレラの言葉に応答するように呟く。
そして、その後に続く文字に視線を滑らせた。
次はトレラ自身のことだ。
仕事に失敗して泣いてしまっている、と書かれては正直、夫として放っておくわけにはいかない。
が、その下に「仕事を終わらせて下さいね?」という文があったので、断念させられた。
「トレラ〜」
ぐすぐす、と涙ぐむ。
瞳が涙で潤んでいても、クァシエは更に先を読み進める。
最後はクァシエが出張から戻ってきた時にデートでもいかがでしょう、というものだった。ト
レラ自身の要望は植物園とのことで、それに関しての異論は無い。
一通り手紙を読み終えたクァシエは便箋を元とおりに折り畳んで封筒の中にしまい込んだ。
ふと、扉を見ると、配達員の姿は無い。
どうやらクァシエが手紙を読んでいることを気遣って、黙って退室したようだ。
心の中で、すまん、と謝りながら、クァシエは早速、棚の中を漁り始めた。