短編V
□DEAR IS LEAARE
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その叫び声は恐怖か、嘆息か――それとも、この先自分に待ち受けている絶望なのかは分からないが。
「機関銃とは……随分、古式を使うな。
俺相手に使うなら、精々マグナムかロケットランチャー程のものにした方がいいだろう。
まあ、たぶん2度目は無いと思うが……」
そんな言葉と共に、男たちを睨むクァシエの瞳が水色から紅へと変わり、
ツートンカラーで彩られていた装甲が赤く染まっていく。
次いで轟いた男たちの悲鳴は、数分ほども続かなかった――。
+ + + + +
ネオトピアがどれ程理想郷なのか、ここにきて、改めて実感させられた。
ネオトピアより遥か遠方にある都市はネオトピアより少々治安が悪い。
いや、恐らくクァシエ以外のネオトピアメンバーならば、少々どころではなかっただろう。
週に1度は、ああいった武器を持った暴力集団が強盗に入ったりしているのだという。
都市の自衛団体では対処しきれないということで、
結果住民の代表で選ばれていた知事がネオトピアに救援を求めたのだ。
言わば、単なる賊退治だ。故にクァシエは自ら立候補したのだが――。
「すぐ帰れると思ったのに……」
うぅ〜、と涙ぐみながら、クァシエはテーブルに突っ伏して呻いた。
その時、左手の薬指に嵌められている銀色の指輪に視線が滑り込む。
『クァシエさん……』
遠くから、優しいあの声が聞こえる。
クァシエはテーブルから伏せていた上半身を起こし、指輪にそっと口付けた。
「必ず戻るから……」
クァシエは自分に言い聞かせるように、そう呟く。
突如として小さなポットの中にいた女性型AIを搭載したメカ生命体。
彼女と共に時間を過ごしていく内に彼女を愛し、忠誠を誓った『光の姫君』と同様、守りたいと思った。
それを踏まえて、この春、結婚した。
冬には子供も生まれる。
自分やトレラへのクリスマスプレゼントなんだよ、と言ったときの、
彼女の嬉しそうな笑顔が、忘れられない。
「……………………」
クァシエが感傷に浸っていると、硬質な金属ではなく、
木材で作られた扉からコンコン、と扉打ちがされる。
「あ、はい?」
ラクロアの洋室のような造りの部屋に取り付けられている扉はドアノブを捻れば開く仕組みになっている。