短編V
□DEAR IS LEAARE
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− DEAR IS LEAAER −
天高く昇っている太陽の光が、彼の右手に構えられている刃の上を滑り、淡い輝きを放っている。
相手はその輝きに一瞬見惚れたのか、素直に彼が滑り込ませた一撃を受けて倒れた。
ズシンッと、重々しい余韻がその場の空間に響き渡る。
「ファーストフェイズ、終了。これより、セカンドフェイズに移行する」
≪了解。直にAAA(トリプルエース)級チームがセカンドフェイズに移り込む時間帯だ≫
片耳のみに取り付けられている通信端末から低い男性スタッフの声を運んでくる。
クァシエは感情が宿っていない無関心の瞳で宙を睨みつけながら、了解した、と応答する。
そのまま通信回線を閉じることなく、ザザッと木々の合間を走り抜けていく。
クァシエは木々の太い枝を飛び越えながら、素早く移動していく。
残像が残るほど速くは無いが、それども恐らく機動性は、その場にいる誰よりも高いだろう。
「む……」
ある木の上で動きを止めたクァシエは、その真下にお目当てのものがあることに気づいた。
粗末なテントが幾つも連なり、昼間だというのに――いや、昼間だからなのか、軍服や鎧などではなく、
いかにも一般人らしい衣服を纏った男達が機関銃などの武具を片手に、厳重な体勢に入っている。
クァシエはすっと気配を殺し、自分の心臓部ともいえる太陽炉を静かに駆動させた。
彼の背から細かな粒子か飛び散り、宙に漂い始める。
「目標を確認。ガンダム・クァシエ、目標を駆逐する……」
独り言のようにそう呟くと、次の瞬間、木の枝の上からクァシエの姿が消えた。
すると、至るところからザーザーと雑音が響き渡り始める。
「ちっ、なんだ!」
「おい、誰か! 予備の充電持って来い!」
男たちが怒号を上げ、騒々しく走り回っていく。
厳重な体勢が一気に崩れたことにより、GN粒子によって一旦、
姿を消していたクァシエはGNソードを一閃させて、男達を切り伏せていく。
その時初めて闖入者がいることに気づいた男たちは体勢を立ちなおすことなく、
今いる場から機関銃などを構えて、姿を現したクァシエに一斉射撃し始める。
銃声と硬い金属音が、休む間も無く、鼓膜を叩いていく。
数秒もしない間に、過半数のものが弾切れとなったのか、
多くの機関銃から銃声が消え、白煙が立ち上る。
誰かがゴクリと固唾を飲み込んで、半ば霧と化した白煙の向こう側を見守る。
ぶわっと白煙が散り、そこから白と青のツートンカラーの装甲に傷一つつけられていない、
無傷のクァシエが立っている。
「う、うわあああああ!!」
男の一人が叫んだ。