短編V

□気分転換の異国
2ページ/7ページ



 さらりと無視したトールギスに怒鳴って反論した猛禽丸。
すると、トールギスはようやく猛禽丸に視線を滑らせた。
そして、再び溜息を一つ。
「先ほどの牛といい、今度は鳥か……天宮(アーク)というのは
動物型のガンダムしかいないのか?」

 今度は猛禽丸の額に青筋が浮かぶ番だった。
「誰が鳥だ! 貴様の方が十分鳥っぽいではないか!」

 その発言にトールギスの額に青筋が浮かぶ。
が、彼はすぐに罵詈雑言を返すことなく、むしろ鷹揚な嘲笑を返した。
「天宮(アーク)のガンダムというのは野蛮ばかりだな。
異国の者に対し、礼儀一つ無いとは、救いようがない」

 ははん、とせせら笑うトールギスの発言にはさすがに猛禽丸も、
血管がブツッと切れた。

 手に握っていた青龍刀を振るうと、トールギスも反射的に
金色の羽根を大剣に変じてその刃を受け止める。
実剣同士がぶつかりあい、硬い金属音が鼓膜を劈く。

「我ら武者を愚弄する気か、貴様!」
「真実を言ったまでだろう? 所詮ガンダムとはその程度の者……」
 くっ、と毒づいた猛禽丸は青龍刀の刃を翻しては武器を離れさせて、
自身も一旦相手との間合いを開けるために身を引いた。

「本来ならばグリフォンの力を使って貴様を黙らせてやりたいが、
当のグリフォンがああも気持ち良さそうに眠っては、
さすがの俺も起こすのは可哀想だからな」
 トールギスは未だに身を丸くして眠っているグリフォンを見て、本日3度目の溜息を一つ吐く。

「それ以前に、貴様は何故俺を攻撃したんだ?」
「グリフォンを起こそうとしただろう」

「しとらんわ! 第一、そこは俺の持ち場だ!」
 キョトンとした顔でもさも当然のように言い張ったトールギスの言葉を即座に否定しつつ、
グリフォンが眠る持ち場をビシィッと指さす。

 そこで合点が一致したようで、トールギスはあぁ、と納得した声を上げたが、
すぐに「それがどうかしたか?」と質問を投げ入れる。

 思わずガクッと、落胆的に片方の肩を落としそうになった猛禽丸だが、
そこは持ち前の気力でなんとか耐えた。
額に手を当て、はあ〜という重い溜息を吐きながら、青龍刀を方にかけてその場に座り込む。

「もういい。ここで景色を見る。お前はそこで、その金ぴか鳥と一緒におると良い」
「グリフォンだ。天宮(アーク)のガンダムは物覚えも悪いとはな」
「天宮の頑駄無で括るな。俺は天剣絶刀・猛禽丸という名がある」
「姿だけではなく、名前まで鳥染みているとはな」

「そっちの意味でつけたのでは無い!」
 肩にかけていた青龍刀の刃を鋭く光らせ、チャキッと軽く構える。
すると、トールギスはふぅ、と何処か残念そうな溜息を吐いた。

「天宮(アーク)のガンダムは冗談を受け流すという概念は無いのか……。
所詮は腕っぷしだけの単細胞という訳か」
 やれやれ、と首を振る。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ