短編V

□気分転換の異国
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分転換の




「……………あ、ぁ……?」

 先の激戦で炎上した天地城を新しく改築した訳だが、騎馬王衆が守っていた四方はそのまま残されている。
 元気丸命名の「元気モリモリ軍団」として天宮(アーク)を一周してきた猛禽丸は
久々に自分の持ち場で天宮(アーク)の光景を見ようとした矢先、先客がいたことに驚いた。

 鎧のように硬質な肉体を持ち合わせ、翼も金色に輝く鳥のようなそれは、
本来猛禽丸が立っている持ち場で丸くなって寝ている。

 猛禽丸はそれに近づき、青龍刀の先で軽くつついた。
すると、それは小さく身じろぎし、つつれた頬を軽く掻いて、再び寝入る。
 大きさは自分より一回り大きいが、こういった反応を返されると、
大きさなど関係無しにそれを小動物だと感じてしまう。


 ぞくっ――……。

 背筋に氷塊が滑り落ちたような寒気に見舞われ、
猛禽丸は気配を感じるより先に横に飛び退った。
次いで風が切られ、猛禽丸が立っていた場所に一筋の鋭い切れ目が入る。


「ちっ、外したか……」
 横に呼び退った猛禽丸を忌々しそうに睨みながら、彼はそう言い捨てる。

 無垢を意味する白い鎧に身に纏い、背中に備われって居る紫のマントが風によって宙を泳ぐ。
先ほどの口調で、彼がいかに傲慢で自信過剰なのかがわかる。
しかも以前、何処かで、こういった属性の人物に会ったような――。

「まったく……たまに外に出せばこれだ。
このような平素な国よりラクロアの方が断然いいというのに……デスサイズの奴め」

 忌々しそうに零された愚痴の中で「ラクロア」という単語を聞き取り、
猛禽丸はハッとなった。

「あ、思い出した! お前、スカイブルーの憎い奴とか、
人前で痛々しい台詞を言っておったラクロアの騎士(ナイト)か!」

「ゼロと一緒にするな」
 合っているが一部では合っていない猛禽丸の言葉を静かに訂正しつつも、
ちゃっかり額に青筋を浮かべる彼――トールギスは自分の武器である大剣に
解かしていた魔法を解いて、金色の羽根を握る。

 トールギスは猛禽丸の持ち場である台座で丸くなっているグリフォンを一瞥すると、
深々と溜息を吐いた。

「いや、溜息を吐きたいのは、むしろ俺だぞ、オイ」
「たまには気分転換に他国へ足を運ぶというデスサイズの提案を鵜呑みした俺がバカだった……!」
「貴様っ……、人の話を聞いておるのか!」



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