短編V

□窓辺の姫様
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 ちなみにノイエ・ジール――レアヴァーナが『光の姫君』に固執するのは
彼女が光皇の生まれ変わりという点も踏まえるが、姫が父以上に過酷な役目を強いられているからだ。

「はあ……」

 今のところ、『光の姫君』に手を出す悪い虫はいない。
が、ガンダムフォース側には、2年前攻め落とされたラクロアの騎士(ナイト)・ゼロがいる。

 姫が正式に称号を継いだのは1年前で、2年前では先代の<世界の光>は既に死去している。
故に『光の眷属者』が干渉する余地は無かったのだ。

 きっとゼロは『光の眷属者』を――<世界の光>を恨んでいることだろう。
その恨みが爆発し、姫に物理的な意味で手を上げていないだろうか――。


「嗚呼っ、こうなることを予め知っていれば、
ここの管理はクァ――ブレイカーだけで、『俺』は姫様の世話に……!」
「ちょっ……! 上司、それはあんまりです! 俺も姫様の面倒見たいですよ!」

「他の部隊長の立場という設定上、お前は何度も姫様と刃を交えるだろう?
こちらはコマンダーとプロフェッサーとの連絡橋その他諸々の裏方の仕事を強いられ、
戦闘に赴くことは出来ない。
せめて――せめて、姫様の元気な姿を見られれば……!
お前があの時、本性を曝け出してでも捕まえていれば……!」
 ブレイカーゲルググの首をひっつかまえて、ガクガク揺さぶる。

「いや、それじゃ主の命令に背くことになりますし……。
第一、俺が本性出したところで、姫様に勝てるかどうか……ってちょ、
上司、くるし……!」

「そんなものトランザムでなんとかしろ!
トランザムならば、少なからず姫様と互角に渡り合える――か、それ以上だ!」

 ブレイカーゲルググの言い分など黙殺し、
ノイエ・ジールは捕まえていたブレイカーをポイッと捨て、額に手を当てた。

「嗚呼、姫様!
どうか、コマンダーがネオトピアに攻め入る日まで……というより、
『俺』が仕方なしにブランベースを落としに参るまで、
純粋可憐なままでいて下さい……!」

 再び祈るように手を組みながら、半ば涙ながらに天に懇願した。
無論、彼らの神は言われる間でもなく光皇だけだが。

「姫様から純粋さが消えたら、上司どうするんですか?」
「姫様から純粋を奪った愚者に、これまでとない生き地獄を味あわせる」

 自分の得物であるGNバズーカの砲身を撫で、
モノアイの裏に臆されている本来の真紅の双眸をギラリと厳しく鋭く光らせる。
その言葉に揺るぎがないことから本気と窺える。


「でしょうね……」
 一に主と姫様、二に仲間、三に使命――というより仲間という精神を持つノイエ・ジール、
もといレアヴァーナにとっては、当然といえば当然の答えである。


「ノイエ・ジール、いますか?」
 数回の扉打ちと共にそんな声が飛びかかり、
ノイエ・ジールはすぐさまGNバズーカを外套の中に隠した。

 ノイエ・ジールの返答を聞くより先に扉が開き、
ふよふよエネルギー体のデスサイズが入室する。
「いるではありませんか」



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