短編V
□窓辺の姫様
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窓辺 の 姫様
ダークアクシズ所属管轄長勤務、ノイエ・ジール。コマンダー・サザビーと同様、
プロフェッサー・ガーベラの手によって造られたメカ生命体だが、
その実、『光の眷属者』の始祖であり、初代<世界のり>という称号を与えられた光皇の力により
誕生した光の化身、『導砲の閃光』レアヴァーナ。
ガンダムフォースではなく、ダークアクシズ側にいるのは、
いずれ死せる運命(さだめ)にあるガーベラ――マドナッグを生かすため。
だが、それ以上の憂いを招くことが起きた。
「そうか……姫様が遂にネオトピアに降臨なされたか……」
レアヴァーナと、彼の部下・クァシエが敬愛する光皇直系の子孫であり、
現在<世界の光>を継承した『光の姫君』。
彼女の保護も、彼らの役目だ。だが――。
「姫様……、今頃不自由なさってはいないだろうか……」
聞けば『光の姫君』は光皇と同じく味音痴で、結構不器用との報告もある。
それに女神のような慈愛溢れる性格や可憐な容姿を取り入れれば、
悪い虫がつくのは目に見えていた。
「クァ――ブレイカーゲルググ!
何故無理やりにでも連れてこなかった!?」
危うく本来の名を呼びそうになって慌てて仮の名前で呼びかけながら、
厳しい光を宿した紅いモノアイでクァシエ――もとい、ブレイカーゲルググを睨む。
ブレイカーゲルググは、サーッと血の気を引きながら慌てて頭を下げた。
「す、すみません!
色々と邪魔が……ってか、今の俺の姿じゃ、本質の5分の1も出せないんですよ!?
さっきだって姫様にボコボコにやられたばかりだし!」
「他の幹部たちの手に渡ったら――特にデスサイズやトールギスあたりに渡ってみろ!
姫様の純粋さがたちまち失われる!」
「『善なる影』がついているから大丈夫でしょう!
キャプテン達だっているんだし!」
「『善なる影』はどうでもいい!
というよりあてにするな、あんなチンピラ」
「上司、酷い言い草……借りにも姫様のお父上なのに……」
「『光の探求者』に比べたら雲泥の差だろう!
例え事故であんな性格となったとしても、『俺』はアレを姫様の父とは認めない!」
「いや、上司が決めることじゃないと――」
ゴトン!
「〜〜〜〜〜!!」
ノイエ・ジールの体長よりも長く大きいGNバズーカの砲身で殴られた箇所を押さえながら、
悶絶するブレイカーゲルググ。
一方のノイエ・ジールはそんな部下をよそに、祈りを捧げるように手を組んで天を仰いだ。
「嗚呼、姫様……!
マドナッグが死せる運命(さだめ)になければ、このレア――ノイエ・ジール直々が
身の回りの世話をしてさしあげたものを……!」