短編V

□天より注ぐ希望の光
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「僕は最初、ゼロがセーラちゃんのケーキを食べちゃったから、ちょっと苦手だったけど……。
でも、ガンダムフォースの一員として一緒に過ごしていくと、
ゼロって案外いい人なんだって思ったんだ」

「案外とは、ひどいな」
「あ、ごめん」
 苦笑交じりに言うと、シュウトもそれに応じて乾いた笑みを浮かべながら頭を掻く。
すると、ゼロは小さく笑みを浮かべた。

「あ、ゼロ、ようやく笑ってくれた」
「え?」

「気づいてなかったの? ゼロってばラクロアに似てから全然笑ってくれなかったんだよ?
無理やり笑わせてるのも悪いし、なんてたって、
ここはゼロの故郷だから真面目になっちゃうのは分かるけど……ちょっと心配だったんだ」

「あ……」
 言われて見れば、とゼロは思い返す。

 ラクロアに飛ばされてから根を詰めすぎて、笑うことすら忘れていた。
それが結果的に中間達を心配させてしまうなんて――。

「やはり私はダメだな」
「そん――」
「結局私は自分のことしか考えていない」

 シュウトが恐らく「そんな!」と悲痛な声を上げようと言いかけたが、
ゼロはそれを遮るようにして口走り、自嘲気味に笑う。

 もう過ちを繰り返したりしない――あの時、そう誓ったはずなのに。


「で、でも、ゼロはちゃんと僕たちのこと考えてくれてたじゃない!」
「そうだろうか?」
「そうだよ」
 シュウトは力強く頷き、ゼロの言葉を肯定した。

「だって僕とキャプテンが落ちた時やケーキ工場のときだって助けてくれた。
僕たち、いつもゼロに助けられてるよ?」

 予想もしていなかった優しいフォローに、ゼロは思わず言葉を失った。
目を数回ほど瞬かせてから、表情に笑みを浮かべる。

「ありがとう、シュウト」
 大切なことを思い出させてくれて――。

 一瞬、何を言われたのか分からなかったシュウトは数拍ほど経ってからゼロの言葉を理解し、
頬を赤らめながら照れる。

「そうだな。いつまでも過去を悔やんでいては、前に進めないな。
だから、2年という無駄な時間が過ぎてしまったんだ……」

 今の今まで過去のことにこだわりすぎていた。

 そう――過ぎた時間がもう元には戻らない。
過ぎた時間はもはや過去。
たとえ時間をとめる魔法があったとしても、時間を遡る魔法は存在しない。

 だから、残された方法はただ一つ。

「前に進むこと」


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