短編V

□天より注ぐ希望の光
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より希望



「んしょ、んしょっと……ふぅ」

 瓦礫が積み重なった壁を登り続けて数刻、
ようやく広い場所まで登りきるとシュウトは全身に込めていた力を抜いて座り込む。
続いてゼロも登りきり、シュウトの近くに座り、天を仰いだ。

 事故とはいえ、一時的にラクロアに飛ばされ、
ラクロアを堕落させた張本人であるトールギスと一閃交えたのはいいが、結果は惨敗。
『ガンダムフォース』一同とその場に居合わせていた三つ子達諸共、
ダークホールら落とされてしまった。

 しかも、このダークホールは精霊以外の魔法は一切使えない空間で、
空間によっては空間が歪んでいる所もある。
故にゼロはシュウトと共に地道に壁を登って、上を目指していた。


「シュウト、大丈夫か? 疲れてはいないか?」
「ううん、僕は大丈夫だよ。ゼロこそ大丈夫?」
「私も大丈夫だ。ただ、魔法が使えなくなっているのは少々歯痒いところだがな」

 今やマントもなく、ヴァトラスの剣も呼び出せなくなってしまったゼロの唯一の武器は
キャプテンが落としたビームサーベルだけ。

「でも、ここならトールギスも来ないんでしょう?」
「あぁ、魔法を使う騎士(ナイト)にとって、
このダークホールはいわば天敵のようなものだし、一部の空間では牢獄化している」

「牢獄?」
「過去ラクロアに叛旗を翻した多くの者達が封印されたまま、ここに落とされている。
まあ、牢獄とはいえ、適用されるのは騎士(ナイト)だけだが……」

 ゼロは視界の端で、陰鬱な雰囲気を漂わせている空間を眺めてから、再び天を仰いだ。
一点の光もない闇ばかりが支配する天は、小さな希望すらも飲み込んでしまうかのように思えた。
堕落してしまったラクロアの空がまだ美しいと思える。


「コアたちの言うかもしれないな」

「え……?」
 ぽつりと呟いた言葉にシュウトが反応する。

「私は予言に記されていた救世主ではない」

 自身の手に視線を落とすと、魔法しか使えない非力な手が視界に入る。
この力が、今となっては憎くてたまらない。


 キャプテンのように正確な確立を出し、爆熱丸のように魔法ではない剣を持っていれば――、
いや、たとえ性能がよくとも、使い手が弱ければ宝の持ち腐れというものだ。


 広げた掌をゆっくりと握り、それを胸に当てる。
「群れるのは好きではない……それは決して、キャプテンや爆熱丸が嫌いという訳ではないんだ。
勿論、シュウトも」



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