短編V
□キミの笑顔が見たいから
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「うん、これが無難だな」
――こうして「シュウト元気付け作戦」(キャプテン命名)が始まったのだった。
+ + + + +
いつの間にか眠ってしまったのだろう。
重たい瞼を開けたシュウトは目を擦りながら、あたりを見回す。
ぐぅ〜――自分の腹から聞こえて来た間の抜けた音に、羞恥によって思わず頬が赤らむ。
「ゴメンネ、キャプテン」と苦笑まじりに扉の近くにいるはずのキャプテンに声をかけたが、
そこにいるはずのキャプテンの姿がないことに驚いた。
「キャプテン……?」
呼びかけても返答は無い。
きっと基地に呼ばれたのだろう。
そう自分に言い聞かせて、まずは未だに空腹を訴える体に食べ物を与えなければ。
ベッドから立ち上がったシュウトだが、その前に扉が開いた。
同時に甘い香りが鼻腔をくすぐり、彼の空腹感を更に煽る。
「シュウト、もう大丈夫なのか?」
「キ、キャプテン……!?」
予期せぬ姿をして来たキャプテンを前に、シュウトは彼の名を口にすることしか出来なかった。
キャプテンはモビルシチズンの姿のまま、縁取りにフリルが使われた白いエプロンをつけていた。
一目で今まで何かが作っていたということがわかる。
そして、その結果が今彼の手に持っているそれだろう。
「キャプテン、何を作ったの?」
「シュウトがセーラのケーキを恋しかったようだから……」
言われて、シュウトは寝る前のことを思い出した。
ゼロに奪われたセーラのケーキのことばかり考えていたから、キャプテンのことを見ていなかった。
「ゴメンネ、キャプテン」
「シュウトが元気になれば私はそれでいい」
「ありがとう。それで何を作ったの?」
「ケーキは材料的に作れなかったから、アップルパイにした」
今焼きたてらしい。
ふっくらと焼きあがったパイ生地の合間から見えるリンゴから香ばしい匂いが漂って、
呼応するようにシュウトの腹から再びぐぅ、と音が鳴る。
「ありがとうキャプテン! 丁度お腹が空いてたんだ」
「シュウトに喜んでもらえてもらった」