短編V

□妖怪騒ぎ
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また『出た』らしいぞ。

恐ろしい。

祟りだ。

呪いかも知れない。

御祓いしてもらおう。

お化けだ。

妖怪だ。

蜘蛛の、化物だ。








「『土蜘蛛』」

「『鬼蜘蛛』」

「『女郎蜘蛛』」

「…『牛鬼』」



 手渡された書類をそれぞれ眺め、書かれたその名を口に出す。


「最近屋敷の奴等が『其れ』を見たと騒いでいる」

 月を背に、情報収集を終えた虚武羅丸の黒が淡々と話す。
月が隠れてしまったらその姿も見えなくなってしまうのではないだろうか。


「『出る』にしろ『見る』にしろ、騒ぎが少々大きくなり過ぎている」

「それで我等に妖怪退治をしろと」

「…遅いぞ、阿修羅丸」

「理由は言わずとも判るだろう」


 虚武羅丸の背後からのそり現れた阿修羅丸。その背にひっついて離れない赤い影。

「…それが天宮一の若武者の姿だと知れたら、笑われるな」
 巨大な腕をがきがきと鳴らし、視線で赤い影に訴える機獣丸。

「阿修羅丸、後ろでうじうじと鬱陶しくないか?」
 自慢の木槌を肩に乗せ、首を鳴らす爆覇丸。

「ケッ。んな奴置いてきゃ良いのによ」
 ぎらりと輝く己の獲物と己の眼で、赤い影を睨む猛禽丸。

「…お化けは、俺も苦手…」
 おばけこわい。今にも鎧の小さな隙間が閉じてしまいそうな破餓音丸。

「お化け退治なんてした事無いからな。一応、俺も不安ではある」
 言葉とは裏腹に。棘付き鉄球が歩いてしかも隙間から目が覗いてるって、
普通に怖いけど言わない方が良いよなあと思う機獣丸。

「しかし見た奴が勝手にそう呼んでいるだけなのだろう?」
 部屋に棘生えたでかい鉄球が置いてあるだけで充分怖い気がするがと思う爆覇丸。

「しかも傷一つ付けられなかったって…こりゃ逃げたのか?それとも一応攻撃したのか?」
 古典的罠みたいな鉄球鎧を常時着用しているお前が怖いと今更思う猛禽丸。


 皆さん話を戻したように見せて破餓音丸の言葉をしっかりと考えております。



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