短編V

□冷静沈着な男に休息を!
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 風邪なんて無縁のものだと思っていた。
確かに最近――というより元からだが、根を詰めているという自覚はない。
体調管理をしっかりしているし、健康検査も自己的にしている。なのに――。


 どうして、風邪なんて初歩的なものにかかってしまったんだろう――?



静沈着な男前に休息を!
〜いや、マジでんでください!〜




「39.5℃……風邪です」

 体温計を持っていたジュリからそう宣言され、遠のいていた意識が更に遠ざかっていくのを、
なんとか制しながら、レアヴァーナは「は?」と聞き返すことに成功した。


「過労からきた風邪ね。暫くは休んだ方がいいわ」

「生憎、そういう訳にはいかない。
こちらはサポートとして使われた者。これしきのことで休んでは――」

 医務室のベッドから立ち上がろうとして、しかし体は彼の意に反し、傾いた。
咄嗟にジュリが駆け寄って、厚い装甲に覆われた体を支えてくれる。

 熱によって思考がうまく働かないし、体もいうことを聞いてはくれない。
これは、いよいよもって重症だ。


「やっぱり休んだ方がいいわ。
私がハロ長官に言って休暇をとってきてもらうから、あなたはここで寝ていて」

「いや、しかし――!」

 否定の言葉を投げかけようとしたレアヴァーナだが、
ジュリの満面の笑顔に押され、言葉を詰まらせる。


 ジュリは廊下を巡回していたモビルディフェンダー達を連れて来て、
ベッドに寝かせたレアヴァーナの傍らに、彼らを屹立させた。


「たまには休みも必要よ? あなたは少し働きすぎよ。昔からそうなんでしょう?」

「……………」
 否定はしなかった。


 確かにノイエ・ジール形態の頃はマドナッグ――当時、
まだプロフェッサー・ガーベラだった彼の補佐をしていた。
ダークアクシズでは風邪なんて引かなかったし、
そもそも風邪をひくという概念は無いものだと思っていた。


 沈黙を肯定と受け取ったジュリがモデルディフェンダー達にレアヴァーナを見るよう言い、
医務室から退室する。


 残されたレアヴァーナはモビルディフェンダー達にも座るよう促し、
自身は大きく溜息を吐きながら天井を見上げ、――その意識は間もなくまどろみの世界へと堕ちていく。



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