ギルティギア・SS ブック

□大罪者への安息
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「何を莫迦な事を……ジャパニーズが私を憎悪するのは当然だろう。
私は弁解もしなければ、謝罪もしない。
私の言動1つで解決するような小さな規模では無いことぐらい、重々承知している。
――何故そのことを貴様が気にする? まさか半裸が私に切りかかってくるとでも?
生憎、この姿でも武装している時と潜在能力は変わらぬ。
唯一、ガンマレイやインペリアルレイが使えないのが難点だが……安心しろ。
この邸の主は貴様だが、カルファードが帰るべき唯一の居場所だ。
身勝手な私用で失わせる訳にはいかぬ」




 滔々と語るジャスティスにカイは返す言葉が無く、
ただ自分が勝手に思い込んでしまった思考を恥じた。
耳まで顔を赤くさせた彼は俯きながら小さく、すみません、と謝罪する。




「で、実際のところ、貴様はどう思っているのだ?
やはり憎いか、私が」



 しなやかな長い指をそろえて自分を指すジャスティスの問いに、
闇慈は小さく笑みを零して首を左右に振った。




「憎いと言えば憎い、憎くないといえば憎くない。
正直、俺自信もよく分からないんだよねェ。
あんたが日本を滅ぼしたのは100年前だ。俺は勿論、生まれてない。
そりゃ、故郷を失ったっていうのは分かるけど、
俺はこうして生きてるから、それだけで良いと思ってる」




 言いながら闇慈はカイが勧めた椅子に腰を下ろした。





 カイが慌てて棚から新しいティーカップを取り出すと、闇慈の前に差し出して紅茶を注ぐ。
闇慈はカイに有難う、と微笑んだ。




「少なくとも俺はあんたを恨んじゃいないよ。じゃなきゃ、ここに来ないもん」


 小さく肩を竦めた闇慈に、ジャスティスがフッと小さく微笑む。


「それもそうだな」




「まあ、俺があんたに唯一興味があるっていうのは、GAERの生誕秘話って奴かな。
あんたも研究に携わってたんだろ?」




 テーブルに頬杖をついた闇慈の瞳が関心によって煌々と輝く。
好奇心が満ちたその眼差しを真っ向から受けながらも、
ジャスティスはそっと瞑目して受け流した。




「命が惜しかったら、それ以上追究するのは止めておけ。
私は元より、フレデリックやカルファードも喋るつもりは無い」




「なら、1つだけ聞いていいかい?
『あの男』はあんた達にとって何だったんだ?」





『あの男』という言葉が出ていた瞬間、ジャスティスの表情が一瞬にして強張る。
す、と眇められた金色の双眸は悲愴も含んでいたし、憤怒も浮かんでいた。
言い表すことが出来ない多くの感情が宿る瞳は、やがて瞼によって閉ざされる。



 ジャスティスの唇がティーカップの縁に付き、紅茶を啜る。




「『あの男』は研究において、指導者だった。
私を含む多くのギアの調整に携わっていたというのは、『あの男』とはギアの創造主だ。
ギアが行う殺戮本能は、GAER細胞に植え付けられた命令そのもの。
私以降に開発されたギアは私の命令を忠実に聞く。
そして、私自身は『あの男』の命令を無意識の内に聞いてしまっている」





 すっとジャスティスは自分の首筋に指を這わせる。



 ジャスティスの鎖骨から顎の下にかけて皮膚が黒ずみ、機械質な部分が露となっている。
それはギア化による作用だと、彼女は語った。




「あんたは『あの男』が憎いかい?」



「さあな……あの莫迦は昔から本心は絶対に語らない男だった。
愛想のいい笑いだけを返して、それで誤魔化していた。
まあ、会ったら殴らないという保証は無いがな」



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