ギルティギア・SS ブック

□暗闇の中の研究所
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暗闇の中の研究所






 2014年 6月5日 天気 雨。



 アメリカは今、日本と同じような大雨になっていた。
強く窓を打つ雨に、恐怖すら感じられる。
それでも、科学者の手は止められないのだ。






 広い研究所の中で、赤い髪を後ろで結い止め、それをなびかせて廊下を静かに歩く女性がいた。
両手には山となった書類やら資料やら抱えて、前があまり見えない。
だが、他の科学者達にぶつからないように、彼女は器用に進む。





 そして、ある一つの部屋へと到着すると、
ノックもせずに半開きになっていた扉の間に足をかけ、扉を蹴った。
バンッという音が部屋に響く。




 それに気にもとめず、その部屋にいた2人の科学者は手を止めずに、
さっさと進めていた。




「おかえり、ジャスティス。あと、扉を開けるときは静かに」



 2人のうち、飴色に染まった長髪を持つ男が言った。
彼も彼女と同様に髪は軽く適当に結い止めていて、それを肩から垂れ下げている。
目線は彼女ではなく、手元にある本に集中していた。どうやら、資料のようだ。




「だったら、これだけの資料を持たせるな!」



 怒声に混じった声を発すると、ジャスティスは縦長のテーブルに山盛りの資料を置く。
置いた途端、テーブルが微かに揺れた。




「揺らすな、ジャスティス」




 別の男が軽く注意した。





「お礼も無しに熱心に研究か、フレデリック」



 少し不貞腐れたかのように、ジャスティスは椅子に腰を下ろすと、
テーブルに片肘をつけ、ジトっとした目で、向かいにいる赤みがかかっちゃ茶髪を持つ男を見据える。
フレデリックと呼ばれた男はテーブルの上でなにを書き込んでいた。たぶん、始末書であろう。






 ジャスティスの言葉に、彼は彼女が持ってきた資料の山を一瞥すると、軽く言い捨てる。



「あぁ……、サンキュー」



 その軽さに思わずジャスティスは肘の位置をズラし、コケかけた。




「フレデリック、それ短すぎ」




 飴色の髪の男は本を膝の上に置くと、苦笑を浮かべて、フレデリックを見た。
それにかかわらず、彼は全く手を止めず、始末書の書き込み欄を次々と埋めていく。




「……今忙しいんだよ」


 その口調からは真剣さは感じられなかったが、確かに、当の本人を見れば様子そのものは忙しそうだ。



 そんな様子をジャスティスはつまらなそうに見つめている。




 やがて、口を動かして言葉を発する。



「それにしたって珍しいな、お前が素直に始末書を書くとは…」



「あぁ?」



「いつもなら、始末書なんて、カルファードに任せっきりだったろう?」
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