ギルティギア・SS ブック
□Best of all
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すかさず否定すると、
フレデリックはカルファードの襟を離し、踵を返す。
「じゃあな、邪魔したな」
スタスタと資料室を出て行く彼の中を見つめながら、
カルファードは「いつでもおいで〜」と軽く手を振る。
パタリ、と扉が閉まると、彼はさて。と、
日ごろ活用しない思考をフル回転させた。
「ついさっきだから、割ったのは……どちらかと言うと、アリアだなァ……」
+ + + + +
「へっくしゅん!」
廊下で小さくくしゃみをしたアリアは咄嗟に白衣の袖で口元を覆い、
じとっとした目で宙を睨んだ。
「風邪か……いや、違うな、一回だったし……。
ということは、噂だな」
勝手に自己解決したアリアは止めていた足を再び歩かせようとした。
が――。
「げっ……」
彼女の表情が引きつった。
何故ならば、煙草を吹かしながら、
いかにも不機嫌そうなフレデリックが目に入ってきたのだ。
思考を上手く活用できないまま、とりあえず近くの物に身を隠す。
幸いにも傍らには積み重なったダンボールがあったため、大人1人身を隠すには最適だ。
フレデリックの足音が徐々に近づいてきている。
妙に自分の心拍数も、はっきりと聞こえてきた。
「やあ、フレディ。なにやら機嫌が悪そうだね」
すぐ傍らでフレデリックを呼び止める声がした。
この声は同僚の「あの男」だ。
「あ、ああ、お前か」
「ただ事じゃないな。どうした?」
「お前、武器開発の研究室にあった俺のレコード、割らなかったか?」
その言葉に身を隠していたアリアの心臓が跳ね上がった。
「レコード? いや、今日はそこに行ってないが?」
「なら、アリアかッ。
アイツ見つけたら、有無問わずひっ捕まえておけ! で、俺に知らせろ!」
「はいはい」
「ったく、アイツ……ッ。たっぷり礼をしてやるッ」
「なあ、なに割れたか知らんが、アリアが女だってこと忘れるなよ?」
「おいおい。女だからって手加減なんてしねェぜ?
それじゃあ、アリアに失礼だろうが」
「まあ、確かにそうだが……」
「まあ、アイツじゃなかったら、話は別だ」
「確かに」
「それじゃ、頼んだぜ」と言い残してフレデリックは遠ざかっていく。
残された彼は大袈裟に肩を竦めると、ダンボール箱に歩み寄ってきた。
すぐ傍らで足を止めると、アリアの顔を覗きこむように顔を寄せてくる。