短編U
□弟子と師匠
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それを覇王丸は一瞥し、湯のみを縁側の床にトンッと置いた。
「一人で楽しい事をするつもりだな?」
「・・あ、あの・・。」
フッと笑う覇王丸を見た爆熱丸は慌てふためいたが、次第に落ち着き。
覇王丸の元へと近づき苦笑気味で覇王丸の顔を見た。
「師匠も一緒に・・どうですか?」
―――*―――*―――*―――*―――*―――
「師匠・・。」
「何だ?」
「・・なんで俺、何時も負けてばかりなんでしょうね・・?」
春は桜の木の下で三色団子の大食い対決、夏は西瓜割り対決、秋は運動対決、冬は雪だるま対決。
爆熱丸も勝ってはいるが、大半の勝利は孔雀丸が奪ってしまう。
実力の差と言うのか、自分の実力に此処最近自身が持てない爆熱丸だった。
「爆熱丸、勝つばかりが強くなる方法では無いぞ?」
「・・・?」
「勝ち続けていく強者は必ず自分の実力を過信してしまう、故に道を外すことが多い。」
「では、師匠も負けたりしたんですか?」
「勿論だ。」
爆熱丸は驚愕した。自分の師匠も負けることがあったのかと知ったからだ。
その様子を見て覇王丸は小さく溜め息を吐いた。
「・・若い頃は呆れるほど負けていた。」
「師匠が・・信じられませんよ!」
「ワシとてしがない武者、最初から強いと言う訳ではない。
同僚達はワシよりも勝ち続けた。自分が他人よりもっと強くなるために・・。」
だが――。覇王丸はそう口にした後、眉を顰めた。
「勝利を目指したワシの同僚達は殆ど――・・道を踏み外した。」
「え・・?」
パチッ――。枯葉の中で燃えている火が一瞬鳴った。
覇王丸は切なげに、その火を見ては脳裏に自分の過去が再生されていった。
変わっていく同僚。
自分の目を疑うほどに変わってしまった天宮。
未だに終わらない乱世。
堕落していく者、絶望していく者。
戦わなければ生き延びられない悪循環の日々。