短編U

□弟子と師匠
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 爆熱丸はもう勝ち目が無いと、小さく歯噛みした。

 息切れしながらゴールへとたどり着いた孔雀丸はその場で倒れこんだ。
遅れてゴールした爆熱丸も息切れをしていた。

「また俺の勝ちだ。」

 孔雀丸は勝ち誇った笑みを顔から小さな汗を滲み出しながら爆熱丸に向けたのだった。




―――*―――*―――*―――*―――*―――





「何で俺だけ・・。」

 頬をプクッと膨らまし、ムスッとした表情で爆熱丸は庭の枯葉の掃除をしていた。
これも孔雀丸とジャンケンをした結果だ。負けたら掃除―・・という条件でジャンケンをしたらこの様だ。


 枯葉は箒で掃いても直ぐに風で散らばってしまう。
塵取りで一生懸命枯葉を集めて、風で散らばらないように庭の隅にある錆びた小さな焼却炉へと、
枯葉を入れていく。

 だが、掃いても掃いても落ちて来てしまう枯葉。
焼却炉が枯葉でいっぱいになり、爆熱丸は火打石を焼却炉に入れた枯葉へ近づけ、
カチッカチッと石同士を擦り合わせるように鳴らした。


「―・・っとぉ・・。」

 小さな火花が枯葉に渡り、途端に小さな火が現われた。
ドンドンと火は枯葉を侵食し、大きな火へと成長していった。
暫く経てば、煙突から煙がモクモクと立ち上ってきた。


「ふぅぅ〜・・。」

 寒い時期なのに顔に汗を流して溜め息を吐いた爆熱丸。
まだまだ残っている枯葉に目を向けてもう少し効率の良い処理方法は無いかと考える。


「・・・・あっ!」

 何を思いついたのか、爆熱丸は庭に無造作に置いてある石を数個持ってきた。
それを円状に並べ、二三段石を積み上げていく。
丸く並べたので中央はポッカリと開いており、爆熱丸はその中に無限と言わんばかりに落ちてくる枯葉を入れた。


「――・・良し。」

 次に爆熱丸は倉庫へと駆けた。


 ―数分後、爆熱丸の腕の中にはさつま芋と古新聞が抱えられていた。
そう、爆熱丸は焼き芋を作ろうとしていたのだ。


 次の角を曲がれば庭に着き、自分の円状に作った石の壁の中へ
さつま芋を入れようと爆熱丸の駆け足が早くなった。
そして火を焚いて、焚き火を作って焼き芋を作ろうと――。

 次の角を曲がった後、爆熱丸は何かに気づき一旦立ち止まった。


「Σ!?――・・師匠・・!」

 先程までは縁側には誰もいなかったが、座布団の上でお茶を啜っている覇王丸が
爆熱丸の目に飛び込んだ。
爆熱丸は思わずさつま芋を落としそうになった。



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