短編U

□時雨ときどく優しさ
3ページ/4ページ



「そなたは何故そうも楽観的に物事を捉えることが出来る?」

「こういう性格だから」

 独り言のように呟かれたマドナッグの言葉に対して、ガンイーグルはけろりと即答する。
マドナッグの口からまた深い溜息が零れた。


(マドナッグって結構良い奴かも……)

 笑みを零しながらガンイーグルはそんなことを思う。


「あぁ、そなたが歩いてきた廊下、さっき私が掃除したばかりだから、あとで掃除しておくように」


「……………ハァ!?」

 ガンイーグルは一瞬、硬直した後に、素っ頓狂な声を上げる。
ぱちぱち、と幾度か目を瞬かせた挙句、「なんで俺が!」と文句を叩きつけた。

「雨の雫で廊下を汚したのはそなただ。では、それを払うのは当然そなただろう。
――何か文句でも?」

「……………………、いえ、無いです」

 反論できないぐらい、素晴らしい正論を突きつけられ、ガンイーグルはすぐさま断念する。


(やっぱりコイツ、嫌いだ……)

 ぐっとタオルを握り締めながら、ガンイーグルはそっと涙を呑んだ。
その怒りを示すようにして、ブランベースで荒れる雲からは眩い光を伴って雷が落ちたという――。


 それでネオトピア市街地に被害が無かったのが奇跡だったと、マドナッグは後に語った。








〜 了 〜








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ