短編U

□リュミエール
3ページ/7ページ



 爆熱丸の言葉を切り捨てるように、鋭い言葉が飛びかかる。
額に青筋を浮かべながら、しかし爆熱丸は憤怒を抑制し、声が発せられた方向へと視線を巡らせる。

「なんだ、ゼロ、いたのか」
「なんだとはなんだ。美しいこの私が、折角キミらの戦いを鑑賞・評価してやっていたというのに」
「評価〜?」

 うむ、と、ゼロは昂然と頷いた。

「まあまあの美しさだな。私とは到底及ばない」
「ああ、お前なら綺麗に散るからな」

 ピキッとゼロの額に浮かぶと同時に、彼は「なんだとー!?」と怒鳴り返す。

「その通りだろーが! クァシエの素早さに、お前がついていけるはずもない!」
「ふん! クァシエと何度も戦っているくせに、一勝もしていないお前が言えたことか!」
「なっ! 一度も戦ったことがないお前がそれを言うかー!?」
「もう! 2人ともケンカしない――」

 ヴンッ! 止めに入ろうとしていたシュウトの言葉を遮るように、
ライフルの口から放たれた粒子ビームがゼロと爆熱丸の合間を横切る。

「「!?」」

 驚愕を顕にさせながら、2人は咄嗟に後ろを振り返り、粒子ビームの発生源を目にする。
白と灰色でカラーコーディネイトされた装甲を持ち、書類を片手に、
煙を立ち上るGNキャノンを構えるレアヴァーナが、そこにいた。


 反射神経に従い、クァシエはレアヴァーナの存在を認識した途端、ビシッと姿勢を正した。

「基地内での乱闘は厳禁であるはずだが……?」

「それは野蛮な爆熱丸に言え。私は美しくあしらっただけだ」
「嘘つけ! お前が先に仕掛けたんだろうが!」
「何をー!」

 レアヴァーナは微動だにせず、悠然とGNキャノンを構えた。
途端にゼロと爆熱丸の口論は止まり、クァシエと同じく姿勢を正す。
 しかし、レアヴァーナはGNキャノンをしまうことなく、じっと彼らを見つめた。

「模擬戦、か……ここ最近、碌に体を動かしていないな。
――クァシエ、一戦付き合え」

「Σはい!?」

 クァシエは唐突に飛びかかった上司の言葉を、間の抜けた声で聞き返した。
レアヴァーナは繰り返されたクァシエの言葉に答えることなく、
片手に持っていた書類をシュウトに渡すと、右側の背中に携えたGNキャノンを手にする。

 もう、誰に言われる間でもなく、レアヴァーナは戦闘態勢に入っている。

 仕方が無い――己にそう言い聞かせ、クァシエは腹を括る。
タオルをシュウトに渡しながら、レアヴァーナと向かうようにして立つと、GNソードを構える。


 風が吹き、そこに植えられている木から数枚ほど葉が舞う。
宙を渦巻く風の音に耳を傾けている最中、レアヴァーナとクァシエは一向に動かない。

 静かに見守っているメンバーの誰かが、ゴクリと喉を鳴らした。


 ――不意に風の音が止まった頃合に、ほぼ同時にクァシエが踏み込む。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ