短編U

□リュミエール
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 爆熱丸の左手に握る一刀が唸りを上げて、空を切る。
が、クァシエは足1本を軸として素早く体を反転させると、器用にGNソードで
爆熱丸の刀を受け止めながら、空いている手で振り下ろさんばかりの彼の腕を掴んだ。


 爆熱丸に背を向ける形で陣取っているクァシエは、しかし鷹揚な笑みを崩さない。

 一瞬の内にGNソードで爆熱丸の刀を弾くと、地面を蹴って軽く跳躍し、
彼の胸を鎧越しに蹴り飛ばした。
直線を描いて吹き飛ぶ爆熱丸はあまりの風圧に体勢を立て直すことが出来ず、背中から地面に叩きつけられた。


「ぐっ!」

 立ち上がろうとした矢先、クァシエは悠然とGNソードの切っ先を爆熱丸の顔に突きつけた。

「まだ続けるか?」
「くっ……!」

 爆熱丸は悔しさに顔を歪めてクァシエを睨んでいたが、やがて両腕を広げると、大きく息を吐いた。


「分かった、負けだ」

 爆熱丸の口から敗北宣言が出たところで、クァシエは初めてGNソードを折り畳み、
変わりに爆熱丸に手を差し伸べた。
差し伸べられた手を、一瞬きょとんとした顔で見つめた爆熱丸だが、
すぐに小さく笑っては手を握り返し、クァシエに助け起こされる。


「おぬし、ブレイカーゲルググと名乗っていたときよりも強くなっていないか?」

「そりゃそうだもん。あの時は実力の半分も出してなかった訳だし」

「なに……!?」
 爆熱丸は小さく目を見開いた。


 クァシエはダークアクシズとの激闘の寸前までダークアクシズに所属していた。
ダークアクシズ管轄長・ノイエ・ジール――レアヴァーナの直轄の部下・ブレイカーゲルググとして。

 爆熱丸は他の仲間と比べて、クァシエと戦う頻度は高い。
コマンダー・サザビーがネオトピアを侵攻しに来たときも戦った。

 初戦など、初めて爆熱丸が押されたほどだ。

 それなのに――、あれでまだ半分以下とは……。


「生まれ持った素質というものか……」

「まあ、実際問題、あんな力じゃ、決戦のときすぐ死ぬから」
 確かにな、と爆熱丸は苦笑を滲まれた声で同意した。


「凄いよ、2人とも! なんか踊ってるみたいだったし、かっこよかった!」

 顔に汗の玉を紡ぐ2人にタオルを渡しながら、シュウトが感想を述べる。
爆熱丸は笑いながらタオルを受け取ると、すぐに汗を拭った。


「シュウトも強くなれば、容易に出来ることだぞ」

「本当?」

「ああ。男児たるもの、心身共に強くなくてはな!」

「心身が強くあっても、品がなければそれは単なる野蛮人だ」



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