短編U

□勝負の最果て
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剣の先が導くもの――それは光り輝く尊いものだと信じたい
戦いを交えて得るものは勝利だけではない



勝 負 の 最 果 て




 異次元世界(ソラ・ディオラーマ)大国家・ラクロア。
2年と半年前からダークアクシズの襲撃を受け、闇に堕ちた世界であったが、
翼の騎士(ナイト)・ゼロの手により、ラクロアに再び光が灯された。

 バグバグにより石化していた人間も元に戻り、ダークアクシズでの激戦により
乱れたラクロアの大地を復興に取り掛かっている。

 その中で、ラクロア騎士団特攻部隊隊長を務めているノルシアはラクロア城の訓練場にて、
新たに騎士団に加わろうと名乗り出た者達の訓練相手となっていた。


 キン! 
剣が交じり合い乾いた音に次いで、相手の剣が弾かれる。

「そんなんじゃ、モンスター1匹足りとも倒せねェぞ!」

 ノルシアは地面に倒れた新人騎士に向かって剣の刃先を突きつける。
その表情にいつもの飄然さは消え、厳しさが宿っている。
騎士は呻きながらも、なんとか上半身を起こすが、間もなくして仰向けに倒れた。


 ノルシアは深々と溜息を吐いては剣を下ろす。

「お前、まず体力つけろ。持久力なけりゃあ、マジでキツいぞ?」

 素っ気なく放った言葉は経験談だ。


 昔、ノルシアも人間側の騎士団ではあったが、その団長に厳しくしごかれて直後に
モンスター退治に駆りだされた。
最初は楽勝かと思ったが、モンスターの数が報告の数も数倍にも増しており、
結局ノルシアは体力がないことで、途中で断念し、団長1人がモンスターを退治したということになっている。


 今振り返れば、もう少し鍛えておくべきだったと後悔している。

「ってな訳だから、頑張って体力つけてくれ? じゃなきゃ、トールギスの奴が――」
「俺が――なんだ、ノルシア?」

 ぞくっ……。
低い声と富に背筋を氷塊が滑り落ちる。

 ノルシアはぎくしゃくとした動きで肩越しに後ろを振り返った。
視界に入り込んだ見覚えのある顔に、冷や汗が流れる。


「や、やあ、トールギス……ご機嫌麗しく――」
「見えるか?」

 ノルシアの言葉を遮るようにして、ぴしゃりと言い捨てたトールギスに、
ノルシアはがくっとうな垂れて、見えません、と一言返す。

 チラリと視界の端で新人騎士を見遣る。
と、彼はトールギスを見るなり、絶句していた。
心、ここにあらずといった状態に、ノルシアは首を戻すと、彼の前でパンッと手を叩く。




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