短編U
□奏でられる旋律と思いやる気持ち
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無関心に軽く受け流そうとしたガンイーグルだが、
レアヴァーナの口から零れたプロフェッサー――マドナッグという言葉を耳聡く拾い上げ直後、
極限なまでに目を見開いた。
「Σうそっ!? マドナッグから!?」
レアヴァーナは偽る様子もなく、コクリと頷く。
「…………すっげェ意外……」
「アレでも結構部下を思いやる気持ちはある。
まあ、こちらが偽装していたことを知らなかったわけだから、当然といえば当然だろうが……」
レアヴァーナは硝子細工でも扱うような易しい手つきで箱に触れた。
コレこそ、プロフェッサー・ガーベラが彼にプレゼントした最初のオルゴールだった。
1年も経っていないのに、何処か遠い昔のように感じるのはコレが奏でる音を長く聞いていたからだろうか。
「なあ、良かったら聞かせてくれないスか?
マドナッグがキャプテン以外にプレゼントするなんて珍しいし」
とてとてとレアヴァーナに近づいたガンイーグルは近くにあった椅子を引き、そこに腰を下ろす。
「プロフェッサーには言うなよ。アレはそれが意外だと自覚した上で、他言無用にしている」
「誰にも言わないッスよ」
満面の笑顔の裏で、もしかしたらキャプテンには言うかも、という苦笑が滲む。
その一心を察しながらも、レアヴァーナは諒承の面持ちをもって嘆息し、そう遠くは無い昔話を語りだした。
+ + + + +
最悪な展開を避けるためにダークアクシズ三幹部の監視者として
光皇より派遣されていたレアヴァーナは管轄長・ノイエ・ジールとして
プロフェッサー・ガーベラに仕えていた。
ガーベラ自身はノイエ・ジールをコマンダー・サザビーと同様に
自分が作ったメカ生命体だと記憶している。
光皇の手引きがあったからこそ、バレずに済んだ偽装だ。
(監視と言っても、定められた日まではまだ間があるだろうに……)
ダークアクシズ要塞の廊下で、管轄長の仕事の一つとして、
まだ征圧していない天宮(アーク)に兵士の配賦をするため、
上司であるガーベラの個室に向かおうとしていたノイエ・ジール。
「プロフェッサー」
軽くノックして個室の扉を開ける。扉が軽い音を立てて横にスライドし、
個室の様子をノイエ・ジールの視界に滑らせる。
プロフェッサー・ガーベラは個室の真ん中に置かれた固定台の上で、新しい備品を開発していた。
ガーベラの手に握られた工具が金属に触れて火花を散らす中、
桃色に光るモノアイがノイエ・ジールを捉えた。
「ノイエ・ジールか。どうした?」