短編U
□AZZURRO ROSAF
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「蒼き薔薇たる、我が伴侶……」
何度、この言葉を繰り返せば気が済むのだろう。
何度、この言葉を口ずさめば彼女に届くのだろう。
いつになったら、祈願は叶えられるのだろうか――?
そう思いながら、デスサイズは石化しているリリジマーナの頬に触れた。
AZZURRO ROSAF
−アッズーロ・ローザ−
ラクロア城の一室で半エネルギー体としての姿をしたまま、デスサイズは入室した。
その部屋には浮き島で石化していたリリジマーナがいる。
本来は逃してあげたかったが、彼女は自分よりも予言を――ゼロを頼った。
エネルギー体から実体に姿を変えたデスサイズは硝子細工を扱うような手つきで
リリジマーナの頬に手を沿えた。
「あと、もう少し……」
ダークアクシズに協力した時点から、考えていた計画。
そのために仲間も、自分の名誉も――全て捨てた。全ては愛しき人のため。
「リリ……どうして、残ったんですか……?」
バグバグが有機物を例外なく襲うことは知っていた。
だが、魔法を使えばバグバグを追い払うことも出来たというのだ。
なのに、この姫はこの場に残り、代わりに護衛として連れて行ったゼロを異世界に飛ばした。
「ゼロが、予言に記されていた救世主だからですか……?」
訊ねても、彼女は答えてくれない。
「悲しいですよ、私は……」
愚痴るように呟きながら、デスサイズは踵を返した。
その時、視界の端を青い花弁が掠める。
「――――…………」
足を止めてそれを見る。
色鮮やかな青を彩る花弁を持つ薔薇が、一輪だけ花瓶の中に添えられている。
デスサイズは仮面の奥に隠されている本来の双眸を細めた。
『ディード、これをあなたに……』
思考の奥でリリジマーナの鈴のような声が彷彿される。
次いで、当時の光景も浮かび上がった。
『!?』
まだデスサイズと名乗る前――本来の名であるディードであった彼は、
リリジマーナより差し出された青い薔薇を見て、え、と間の抜けた声を返した。
『ちょっとしたお礼です。ディードはいつも良く働いていますから』