短編U

□見えない絆
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− 見えない






『ガンダムフォース』には珍しい双子の兄弟機が存在している。
どちらのシリアルナンバーもGP−04・マドナッグだが、この兄弟は似ているようで似ていない。

「白、このデータをアルシス設計長に持って行って欲しいネ!」

 中国拳法を舞いながらカオ・リンは装甲が白いがために名付けられたマドナッグ――、
通称『白』にデータが圧縮されたファイルを渡した。

「はい、分かりました♪」

 白という色が似合うほど輝かしい笑顔を浮かべて頷く、
兄の立場にいる白・マドナッグの笑みは癒しを齎す。


 比べ、弟の立場にあるマドナッグ――装甲が黒いことから、
通称『黒』と名付けられたマドナッグはその装甲の上から更に
サーモンクピンクに染められた装甲で身を包んでいる。

「黒――」
 ビュン! ガツーン!

 呼びかけたガンイーグルの頬を黒マドナッグ――もとい、
プロフェッサー・ガーベラの片腕に備えられた工具が唸りを上げて飛び、壁に突き刺さる。

「次、その名で呼んでみろ。問答無用で解体してやるからな……ッ」

 ――平たく言えば反抗期である。


 白と同じ姿であることで弄られることを恐れた黒マドナッグは
自分からサーモンピンクに染め上げられた装甲を作り上げ、黒い装甲の上から被せている。
ちなみに、この形態になると、名前も『プロフェッサー・ガーベラ』と改名される。


 似ているようで似ていない兄弟機。彼らが唯一素直になれる人物といえば
『ガンダムフォース』隊長であるキャプテンだけであろう。
他の者がどう手を加えようが、特に黒――ガーベラはどうしようも無いのだ。

 S.D.G.のスタッフ達は日々、頭痛に悩まされているという。


「アルシス設計長、カオ・リン主任から預かったデータです」

 白はカオ・リンから預かったデータファイルを長身痩躯で白衣を身に纏った男に差し出した。

「ありがとう、白」

 彼は柔らかく微笑みながら白からデータファイルを受け取ると、徐にその頭を撫でた。


 アルシス――ロボット工学の第一人者であり、
キャプテンやガンバイカーなどを初めとするモビルディフェンダー達の設計に携わっていた人物である。
質の良い黒髪を適当に一つに括り、度が入っていない眼鏡――つまり、伊達眼鏡をかけ、
白衣を着込んだ姿はなかなか様になっている。

 白は、自分に優しい笑みを浮かべて、軽くとも重くとも、
とにかく任務が完了する度に頭を撫でてくれるアルシスが好きだった。

「他にも何かありましたら、遠慮なく言ってください」




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