書
□今日だけ特別
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「何なんだ、あいつは」
それでも、納得してしまう自分に物悲しさを覚えて、振り切るように稽古を始めた。
「苦し…ぃ……」
薄っぺらい布団に、体を丸く縮めて苦しげに息を付く。
「食いすぎだ、バカ」
背を向けて横たわる総悟に、土方は呆れたように言葉を掛けた。
総悟の腕に抱える程あった柏餅は、気が付いた頃には粗方その小さな身に押し込められてしまっていた。
「近藤さんも慌てて医者呼びに行っちまったし…」
真っ青になった近藤の姿を思い出し、疲れが呼び起こされる。
「全部ひじかたのせいだコノヤロー…」
「何で俺の所為なんだ。お前が食いすぎただけだろーが」
「………」
もぞりもぞりと身じろぎをして、懐から何かを取り出す。
背を向けたまま、取り出した何かを差し出された。
「やる」
「………柏餅?」
小さな掌の中には、その掌に見合う大きさの柏餅。
「だから俺は甘いのは…」
「やるって言ってるんでぃ。素直に受け取りやがれ」
ずいっと差し出されたそれに、じっと視線を落とし、差し出した子供とを交互に見比べる。
いつもの総悟から考えれば余りにも奇妙な行動に、もしや一服盛られているのでは…等とまで思考が働いてしまい、手を出すに出せなかった。