□貴方だけ
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土方さんがバズーカの発射口に鞘ごと刀を突っ込んだりしなかったら店ごとそのまま火の海になってた所だ。
駄菓子のオマケ程度で帳消しになると思ったら大間違いってもんだ。


そりゃあ背はまぁ小さい方だし、隊服着てても体つきは土方さんと比べるまでもないって感じだけど、剣の腕なら真撰組の誰にも負けない自信もあるし、素手だってそこらのヤツに負ける事はない。
自分の顔の可愛さだって承知の上。
だけど、それでも女として扱われたのには腸が煮え繰り返る位の屈辱を感じる。




顔だけではなく、体格で思われたのだ。これは。




コンプレックスがチクチクと刺激される。

子供の頃は馬鹿な大人達だと楽観に享受していた事も、この歳になってまでされればただの侮辱中傷にしかならない。

コロコロ転がる飴を右へ左へ舌で追いながら、煙草を咥えついて歩く土方さんをチラリと盗み見た。
見るからに男臭さを感じさせる土方さんには一生分からない悩みなのだ。


「女扱いされるのはまっぴらでぃ」

程よく小さくなってきた飴玉を思い切り噛み砕き、吐き捨てるように言った。
屯所への道を急ぎながら袋の中に手を突っ込み、新しい菓子を漁る。
夕食まではまだまだ時間はあるし、腹に溜まる物がいい。
甘い物を食いまくるから子供っぽく思われたりするんだ、って言われたけど、それなら万事屋の旦那はどうなるってんだ。
心は少年とか何だ言ってるけど、どう見たっていい年のオッサンじゃないか。あ、土方さんも同じ歳くらいだっけ?



「…なぁ、そんなに女扱いされるのが嫌か?」

そんな事を考えながら探り出したウ●イ棒の袋を破くと、妙に神妙な顔をした土方さんの声。
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