書
□嫌い
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嗚咽が漏れそうになるのを必死で抑えていたら、後ろにどっかりと座られた。
「見つけちまった以上、捨てておけねぇだろ」
帰りたくなったら言え、と言ったきり何も言わなくなった男に、お前がいなくなったらすぐにでも帰る、と心の中で一人愚痴た。もし今口を開いても、嗚咽しか出てこないのがわかっていたから。
口唇を思い切り噛み締めて、袴の端を力いっぱい握り締めた。
後ろにあの男の気配を感じるだけでぐるぐると波打っていた心が静かになっていくのを感じられた。
それが信じられなくて、自分自身に苛立ちを感じてならなかった。
「お前なんて…キライだ」
泣いてる声を悟られないように吐き捨てた。
俺達の世界に入ってきたお前なんて消えてなくなればいい。
姉上と近藤さんがいればそれでいい。
お前なんていらない。
嫌いだ。
姉上の隣にいるお前が嫌いだ。
近藤さんの隣にいるお前が嫌いだ。
誰かと一緒にいるお前が嫌いだ。
知らない世界を見せ付けるお前が嫌いだ。
俺の事をガキというお前が嫌いだ。
わけのわからない感情で泣きそうになる。
頭が痛い。
胸がズキズキと痛む。
いつからこんなに嫌いになっていた?
いつからこんなに俺は弱くなった?
イライラする気持ちをいつもいつも与えるお前が嫌いだ。
嫌いで嫌いで、仕方ないんだ。
だから姉上、
この気持ちを好きって感情だとするなら、俺はきっと狂ってる。
END
好きの気持ちが理解できないチビ沖田。
ミツバや近藤に対する親愛の情と、恋愛感情が区別できなくてごっちゃになってます。
好きだからこそ余計に自分を見ない土方が嫌い。
可愛さ余って憎さ1万倍くらいでしょうか。