書
□貴方だけ
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「そんなに拗ねんなよ」
「土方さんにはわかんねーんですよ、この悔しさは」
むっつりしながら大通りを只管早足で歩く。
すれ違うヤツには変な目で見られるけど気にしてなんていられない。
口の中で転がる大ぶりの飴玉は仄かに甘味を与えてはくれたが、苛立ちを慰めてなんてくれなかった。
「ならその駄菓子も捨てちまえばいいだろ」
「これとあれとは別話でさぁ!」
斜め後ろを大またで着いて来る土方さんを思い切り睨みつける。
「わっけわかんねーな、おい」
呆れた風に肩を竦められる。
イライラが抑えられなくて、まだかなりの大きさを誇っている飴玉をガリガリと歯で噛み砕こうとするけれど、砕く事もできず飴の欠片だけが散った。
腕に抱えた袋の中の駄菓子は、見回りの途中土方さんを無理矢理付き合わせた店で購入した物だが、量は実際購入した金額分より僅かに多い。
天人経営の新しい店。
そこに珍しい菓子があると聞いて、渋る土方さん(財布)を連れていつもの駄菓子屋ではなくそちらへ直行した。
「ったく、あの店員どこに目ぇつけてんでぃ」
「お前散々自分の事可愛いとかなんとか言ってるじゃねーか」
「そりゃ俺ぁキュートでプリティーですよ。けど女子供に見られるのは頂けねぇんです!」
「だからその基準がわかんねーんだけど。駄菓子おまけしてもらったんだからいいじゃねーか」
そう、有ろう事かこの沖田総悟様を女と間違えやがった。
しかも『お嬢ちゃん』ときた。
『お嬢ちゃん、可愛いからちょっとオマケしてあげるよ』………ときた。