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□君の声依存症
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 黒、闇、深夜、沈黙。それは時に心地良い。……なのに、不意に心細く感じてしまうのは何故だろう。




 自分以外の家族が皆寝て静まり返った家の中。もしかしたら、このまま自分は一人になってしまうのではないかと時にくだらないことを考えてしまう。こんなに心細く感じる案外臆病な自分に思わず笑った。こんな時は、何かにすがりたいと思ってしまう。




 ……声が、無性に聴きたくなった。昼間会ってさんざん話したばかりなのに、朝を迎えればまた会えるのに。こんなにも、彼女の声が聴きたくなるのは、何故。




 衝動に突き動かされるまま携帯電話を手に取る。メモリーを引き出して、開くのは彼女の名前。電話番号を選択し、少し震える指で発信ボタンを押した。耳に当て規則的な発信音を聴く。一回、二回、三回、………深夜なんて非常識な時間帯に電話するなんて迷惑だよな、なんて当たり前のことを今更のように思った。彼女はもしかしたら寝てしまっているのかもしれない。




 六回目のコールで切ろうかと思ったその時、ブツッとその規則的な音が中断された。一拍置いて、もしもし、と聞き慣れた愛しい声。




「……俺、だけど。もしかして寝てたか?」


『え、あぁ、うん。ちょっとうとうとしてた』




 やっぱり寝ていた。ごめん、と思わず謝ると、彼女は穏やかに笑う。




『ううん、寧ろ有難う。ちょっとだけ休むつもりだったから。そのまま朝まで寝るところだったよ』




 課題がなかなか終わらないんだ、と彼女は苦笑する。




『それにしても珍しいね。こんな時間に電話掛けて来るなんて』




 どうかしたの、と訊かれていや、と俺は否定する。




「迷惑だったか?」


『ううん、嬉しいよ。特に用がなくても』




 少し照れたような声音で言われて、俺は心が穏やかになるのを感じた。何時だってそうだ。彼女の言葉は俺の胸に心地良く響く。時には勇気を、時には安らぎを、俺に与えてくれる。




「……声」


『ん?』


「声が聴きたかったんだ。お前の声が、なんだか無性に」


『……そっか。じゃ、何か喋る? 適当に他愛のない話でも』


「課題は?」


『大丈夫。明日学校でもできる量だから』




 さぁて、何を話そうか。そう明るく言う彼女が愛しくて。優しい彼女が、たまらなく愛しくて。




「……なぁ、」


『ん?』




次の言葉を促す彼女に、できるだけ優しい声音で好きだと囁いた。











(少し間が空いて、彼女は小さな声で私もと呟いた)
(心を支配していた寂しさは、いつの間にか消えていた)





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最近こんな形態のばっか読んでる気がする。
ところで、これって甘いんですか?

和咲にはよくわかりません←


100702

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