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□メガネの偉大さ
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 午前中最後の授業が終わる。俺はいつものように平和な時間を過ごす……つもりだった。



「ねぇねぇねぇねぇ!!!!」

「煩い耳元で騒ぐな馬鹿女」



 突然喋り出した少女の頭を軽く小突く。



「痛っ!! ちょっと、この純情乙女になにすんの!!!」


「どこが純情乙女だよ。ガサツ・大食い・男前の三拍子がきっちり揃ってるお前のどこが」


「心も体も乙女ですが何か?! アタシのどこが男前だっていうの!!」


「見たまんま全て。この前駅前のキングサイズのパフェ一人で完食したのは何処のどいつだ?」


「……そういえばさぁ「無視か」



 都合が悪くなった少女は話を変える。またくだらない話なんだろう。



「メガネって偉大だよね」


「…は?」



 何を言い出すかと思えば。



「だーかーらー、メガネって偉大だよね!」


「……ああそう。だから何か?」


「あっ、ひど!! そんなそっけない言い方しなくてもいいじゃない!!」


「だって意味わかんねぇし。メガネってそんなに偉大なモンなのか??」


「偉大に決まってるじゃない!! 大体、アンタだってメガネ掛けてんじゃん!」


「そう! メガネは世界中の視力が悪い人にとってまさに神のような存在!! つまり人類にとって必要不可欠な日常の必需品!!!」


「世の中にはコンタクトレンズというメガネよりも画期的なモノがあるぞ」


「ダメ! ダメなの!! そうかもしれないけど、アタシはコンタクトよりもメガネを選ぶ!!」



 ……それはただの個人的な意見なのでは。



「………」



 呆れて何も言えない俺の前で少女は熱弁を振るい続ける。どうやら火が着いてしまったようだ。こうなったらもう止まらない。



「メガネを使うことによってその人の外見が若干賢そうに見えるし、掛けてる時と掛けてない時とに印象のギャップがでる!! そう、そこがいいのよ!!! つまりメガネはアタシ達にとって無くてはならない存在なの!!!」




 熱弁は続く。これはもう予鈴が鳴るまで終りそうにないだろう。


 ……そんな彼女に呆れてはいるが、嫌な気はしない。……むしろ見ていて面白いし、可愛いとも思う。


 それはきっとアレなんだろう。惚れた弱みってヤツ。


 彼女の熱演はまだ続く。俺の昼休みは、こうしていつものように過ぎてゆくのだった……






メガネの偉大さ



(……ねぇ、聞いてる?)
(はいはい、聞いてますよ…)

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