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□人魚の歌3
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 文化祭はあっという間に終わってしまった。美人を見つけては声をかけようとする秋山を何回叩いただろう。七回目辺りに声をかけたのが美少女ならぬ美少年でその後酷く落ち込んでいたのは覚えている。

 思い返してみると、文化祭そっちのけで秋山に付き合って漫才めいたことをしていたような気がする。

 文化祭の余韻を残しつつ日常が戻る。甘ったるい金木犀の香りが学校中に漂っていた。


「さっちゃーん」

「その名で呼ぶな連敗男」


 目の前の席に座って倒れこんでくる秋山にそう返すと、奴はぐはっと言いながらわざとらしく胸を押さえた。


「酷いぜ相棒……どうしてこんなにがんばってるのに彼女ができないんだろ」

「男にまで声をかけようとするそのナンパ癖をどうにかすればいいんじゃないのか」

「ぐっ、オレの精神ポイントが半分減ってしまった!! 否定しないでオレのアイデンティティ」

「知らん。てか、今まで付き合ったことのない俺に訊くなよ」


 投げやりに言うと、えっ、と驚いた声と共に上がる顔。間抜けな表情のお陰で自称美形が台無しだ。


「何だよその顔」

「何だよって、お前、まだ付き合ってなかったの?」

「は?」

「水波ちゃんだよ。運命の再会を果たして、一緒に委員にまでなって。文化祭の前の日も折角先に帰って二人きりになればいいって思ってたのに。進展なしか!!」


 どうやら先に帰っていたのはわざとだったらしい。俺は思わず眉根を寄せた。


「そんな深い仲じゃねぇよ。進展もなにもあるわけないだろ」

「えーつまんない……あ、水波ちゃん」


 噂をすればなんとやら。秋山の視線を追うと、少し離れた所に水波が立っていた。秋山の呼び声に気付いた彼女はこちらに来る。

「どうかした?」

「いやぁ、姿が見えたからなんとなく。どう、クラスには慣れた?」

「二人のお陰でだいぶね。有り難う、誘ってくれて」

「いやいや」


 そんなことを目の前で話される。
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