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□君の言葉は何よりも残酷で
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「愛してる」


 彼はアルコールに酔うと必ず同じことを言う。熱に浮かされた赤い顔を寄せて、酒臭い吐息で私に囁くのだ。


「あいしてるよ」

「私もだよ」


 いつものようにそう言うから、わたしも同じように返す。もうこれが何度目になるかなんて、数えるだけ無駄だ。

 この後彼が何て言うかなんて、わかりきってる。


「なぁ、」


 黙ったままの私が気にくわないのか、彼は拗ねたような顔をして私を抱き寄せた。彼の首元に顔を寄せる。お酒さえなかったら、さぞかし甘い甘い雰囲気になったんだろう。

 とくり、と規則正しくゆるやかに響く心音を聞きながら、私は口を開いた。


「……なに」

「あいしてるよ」

「知ってるよ」

「俺、お前の為なら何でも出来ると思うんだ」


 そう、何でも。


「うん」

「お前の願いなら何でも叶えてみせる」


 言わないで、と願っても彼はきっと言葉を続けるのだろう。


「……うん」

「本気だよ。お前が望むなら、何だって」





「人殺しでも何でも、お前の為ならやってやる。お前の為ならいつでも死ねる」





 私は無言で顔を上げた。酔いの回った、けれど真剣な顔。冗談でしょう、なんて最初に言われた時のように笑って流すことなんて私にはもう出来ない。

 その意思の強さを深く深く理解してしまっているから。それほど、彼を知ってしまったから。

 私が望めば、本当に何でもしてしまうのだろう。犯罪でも人殺しでも、……自殺でも。

 こうやって言われる度に私の心が軋んだ音を上げるなんて、彼は知らないのだろう。


 そのまま熱い唇を押し付けられて、もう一度抱き締められる。そうして彼の寝息が聞こえてくる頃、私は囁くように訴えるのだ。


「……ねぇ、私の望みを何でもきいてくれるなら。人殺しなんてしないで。自殺なんてしないで」




「私の為に、生きてよ」






君のは何よりも
(私はあなた以外何も望まない)
(だから、そんなこと言わないで)




---*----*---

すんごい重くなった……


110319

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