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□子犬のマーチ
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「コータ、行こう!」


 ぱたぱたと家の中を走る音、にっと笑って赤いリードをかかげるユリちゃん。そして、はずむようなユリちゃんの声。それが、ぼくのいちばん大好きな時間が始まる合図。

 ぼくはいつもたれている耳をぴんと立てて、いきおい良くユリちゃんに飛びついた。うれしくてうれしくて、自然にしっぽがゆれてしまう。そんなぼくにユリちゃんは笑って、小さな手でなだめながらぼくの赤いくびわにリードをつけてくれた。

 ぼくがこの家に来て、ユリちゃんの弟になったのは秋の始め。今はもう春だから、そろそろ半年になるんじゃないかと思う。出会ったときから、ユリちゃんといっしょにおさんぽに行くのがぼくのにっかだ。

 ぼくをリードでつないで、ユリちゃんがお気に入りのスニーカーをはいて、さいごにお母さんから今日はおひさまが元気だからって帽子をかぶせてもらって、しゅっぱつ!

 外に出ると、たしかにおひさまの光がまぶしかった。


「いいお天気だねえ。コータ、今日はどこ行こっか?」


 いちど大きくのびをしたユリちゃんが、首をかしげてぼくにたずねる。ぼくもことりと首をかたむけて、くんくんと空気をかいだ…………近くのお店がいっぱいあるところからいいにおいがする!

 こっちがいい! そう言って、ぼくはくいとリードをその方向にひっぱった。


「商店街に行きたいの? そういえば、今日はお肉屋さんのコロッケの日だったね」


 食いしんぼうだなあ、とユリちゃんは笑ってリードを持ち直す。早く行こう、とぼくがせがめばにっこり笑ってうなずいてくれた。


「じゃあ、走って行こう! 帰ったら晩ご飯だから半分こね」


 そして、ぼくらは走り出した。

 ぼくはコータ。子犬のコータ。ぼくのかぞくは、お父さんとお母さん、そしておねえさんのユリちゃん。

 昨日も今日も明日も、ぼくはユリちゃんといっしょに町の中をかけまわる。






▽子犬のマーチ









誰だ最低週一って言ったの。

121006

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