TTS
□雨の日の帰り道
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耳に入る静かな雑音と、独特の水っぽい匂いに私は溜息をついた。昇降口から見上げる空には薄暗い色の雲が低い位置で横たわっていて、見ているだけで気分が落ち込んでしまいそうになる。今朝はあんなに良い天気だったのに。
天気予報を信じて傘を持たせてくれた母さんに感謝しながら、私は水玉模様の傘を開いた。ローファーでコンクリートの地面へ足を踏み出せば、頭上でぱらぱらと音が鳴り始める。その音を聞きながら帰り道を歩いていると、前方に見慣れた後ろ姿を見つけた。傘を持っていないらしく、雨に降られている肩は暗く染まりつつある。大方、雨足が強くないから傘をささなくても大丈夫だろうと判断したのだろう。私は苦笑して、駆け出した。
声を掛けずに横に並んで、傘を傾ける。横を向けば、少し驚いたような顔。
「よっ」
「……誰かと思えば」
「天気予報見なかったの? 夕方降るって言ってたのに」
からかうように言いながら、傘を持つように促す。一瞬触れた手に相合傘だ、と思ったのはここだけの秘密。
「全然見てなかったわ。今日起きたの結構やばい時間だったし」
「かなりギリギリの時間で来てたよね」
他愛の無い話をしながら二人で歩く。終わる気配のない課題のことやふと耳にした先生たちの話、学校のそばにある饅頭屋のメニュー等々。
自然に会話が切れたある時、私はふと思い出したことを口にした。
「そう言えば今日、思いっきり変な夢見たよ」
「ふうん、どんな?」
「鎌持った死神と人生について語ってた。てか、死神に人生相談されてた」
「恐ろしくファンタジックな夢だな。……ちなみに相談内容は?」
「あんまり覚えてないんだけど、上司がどうしようもなく嫌味な奴なんだって」
「ぶはっ、何それ現実的」
たまらず吹き出してしまったようで、彼は肩を震わせて笑った。その表情を見て、釣られるように私も笑う。
雨の日の帰り道はいつも憂鬱だけれど、こうやって二人で帰るなら悪くない。そう、止む気配のない雨音を聞きながら思った。
▽雨の日の帰り道
初っ端から死神とファンタジック出てきてどうしようかと思いました。
うっはなにこれwww 低クオリティ過ぎて泣きたい。
120621