Gray-Wind
□第一話【風を纏う者】
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《act.3》
一方、古代都市の最西部にある洞窟。その入り口に立っていたゼンは、若干不機嫌そうな表情で空を見上げた。
「まだか――」
カナリと別れて既に一時間程経っている。いくらなんでも遅すぎではないだろうか。
――そんな遠くまで引き離したのか、それとも手こずってるのか……あいつの力でならここまで一瞬で来れるはずなのに。
自分が行けば良かった、と今さらながら思う。どうしてあの時承諾したのかと自分を責めた。
――それは、あの目に促されたから。
そんな自答が頭に浮かんだ。カナリの瞳を思い出す。真っ直ぐに見つめてきた、緑が翳る黒い瞳。その奥にちらつく光はとても強く、ゼンを圧倒させたのだ。
あの瞳を、以前もどこかで見たような気がした。――否、全体的に見たことがあるような気がしたのだ。しばらく考えた後、ゼンは一つの答えにたどり着く。
――似てるんだ、あいつに。
記憶の中の幼い少女も、同じような目をしていたのだと思い至る。そう考えると、今までの既視感もそれに当てはまるような気がした。
似ているのだ、記憶の中の少女とカナリが。確信は持てないが、所々似ている部分がある。
――でも、カナリはあいつじゃない。
もしかすると、自分は彼女が待ち望んでいた人であって欲しいと思ったのかもしれない。しかしそれはカナリに失礼なことだ。別人を重ねるなんて、どうかしている。
思考を中断しようと首を振り、再びカナリの安否を思う。そろそろ本気で探しに行こうかと思ったその時、前方からけはいがした。念のために刀の柄を握ってそちらを見る。
「誰だ」
「ゼン!」
こちらに向かって走って来ていたのはカナリだった。